京王線調布駅から徒歩1分にある会員制コワーキングスペース「co-ba CHOFU(コーバ チョウフ)」には、様々な仕事をしている人たちが日々集まっています。
いったい、どのような人たちがco-ba CHOFUを拠点に働き、暮らしているのでしょうか。
Vol.19は50代で早期退職され、中小企業診断士として新しい道を歩み始めた株式会社Chain-GE Partners代表 阪井英隆さんにお話を伺いました。

―現在のお仕事について教えてください。
1991年に電機メーカーに就職し、2025年3月31日で会社を早期退職しました。
退職前から中小企業診断士の勉強を始め、実習等を経て10月1日に中小企業診断士として中小企業庁に登録されました。まだまだ新人ですので、お金をいただくような仕事はこれからとなります。
中小企業診断士は医師に似たところがあり、国家資格を得てもすぐに仕事ができるようになるわけではありません。実務知識の習得や様々な経験を積む必要があるため、当面は修業している状態です。現在は4つの研究会と2つの診断士会に所属して、先輩の診断士の方々と一緒に、自己研鑽に励んでいます。
―どういった分野で活躍していく予定でしょうか?
宇宙開発系の助成金申請に強い中小企業診断士を目指していきたいと考えています。
個人的に、「月に暮らす」という未来に興味があります。
月の重力は地球の6分の1なので、無重力の宇宙船の中の技術がそのまま使えません。言い換えれば、月なら地球上での技術が応用できるので、開発費用も安いし、既存技術や部品を活用できる分野だと考えています。
元々電機メーカーに勤めていたのもあり、まじめで堅実で、優秀な中小企業をたくさん見てきました。日本の製造業は斜陽産業と言われていますが、宇宙産業に参入すれば活路が見いだせると考えています。
―中小企業診断士×宇宙開発 なかなか他にはない組み合わせですね。
早速、宇宙開発に関わる大学発ベンチャー企業からの相談をいただいています。
今、国としても宇宙開発に力を入れ始め、予算もある状況なので、大手企業だけでなく、中小企業でも参入できるチャンスです。大企業よりも意思決定がしやすく、動きが速いのも中小企業のメリット。会社のブランディングとしても、「宇宙開発事業を行っている」というだけで、技術力の高さなどを一言で伝えられ、最先端の事業に関われるということで社員のモチベーションも上がると思います。
頑張っている工場を「宇宙」という切り口でサポートし、製造業界を元気にするのが目標です。中小企業診断士は、それを叶えるための手段と捉えています。「中小企業診断士×宇宙」という組み合わせはあまりないし、これからホットな分野なのでワクワクしています。
―現在の働き方を選んだきっかけや理由について教えてください。
電機メーカーでは技術者として入社し、その後新規事業や新規テーマを立ち上げる仕事をしていました。入社直後から50歳以降は別の人生を歩みたいと考えており、やりたいことが二転三転した後に、宇宙進出が候補に挙がりました。それを実現できるのは中小企業だと気付き、中小企業診断士が実現する手段となると考えて試験にチャレンジし2024年に合格することができました。
―入社直後から独立することを考えていたのですね。
入社して上司たちの姿を見た時、見本にしたい人がいなかったというのがあります。出世をしても、さらに上司がいるし、ずっと誰かに従って仕事をし続けなければならない。それ以外の人生も歩んでみたいと思っていました。
同僚に独立の話をしても、「自分は無理だ」と言う人がほとんどでしたし、自分もかつては”そっち側の人間”でした。
しかし、リスクを把握したうえで、備え、覚悟することに決めて、独立に向けて着々と準備を進めていきました。調べたり準備をしたりしているうちに、それが全く苦痛ではなく楽しくなり、あっという間に時間が経過していることがありました。そのときが「自分でもできる」と思えた瞬間でした。
リスクへ備えた一例としては、「自分がイメージするお客さんが見つからないかもしれない」「収入が入らないかもしれない」という心配に対して、中小企業診断士としての仕事を詳しく調べることで「団体に所属して、そこから紹介してもらった仕事を受ければ収入が得られる」ということが分かりました。正式に中小企業診断士になってから数団体に所属し、万が一に備えています。
もし独立を迷われている方に声をかけるとしたら、「怖いならやめておいた方がいいし、備え、覚悟しながら進むのが楽しいなら、こっち側に来たら?」と伝えたいですね。

―独立して良かったことは何ですか?
独立して良かったことは、全ての意思決定が自分でできることです。実際にはビジネスパートナーである大学生の息子と相談しています。想定通りに事が運ばなくても、次の手を考え、決断し、実行することができます。会社員時代は、ミーティングで提案しても、上司や関係者の意見で色々と変わってしまい、最終的な判断で自分のやりたいことが実行できないこともありました。
悪い点としては、社会的信用がゼロになることと、全ての責任を背負わなくてはならないことです。特に収入の見通しがまだ立っていないので、その面の不安は常に付きまとっています。今はまだクレジットカードも新しく作れませんし、家も借りられません。信用をゼロから積み上げていく必要があります。
―co-ba CHOFUに入会したきっかけを教えてください。
中小企業診断士の業務は自宅でもできるのですが、会社を退職して独立するにあたり、既に独立済みの方から、「自宅とは別に事務所を構えたほうが、公私の区別がつき生活のリズムが整えやすくなる」とのアドバイスをいただきました。調布にあるco-ba CHOFUは、法人登記もできるワークスペースで、HPを見ても楽しそうだったので、見学して入会を決めました。
―ホームページを見て楽しそうだと感じたのですね!
他のシェアオフィスやコワーキングスペースのホームページを見ても、人が映っていないものが多いです。そんな中、co-ba CHOFUはまずトップ写真に人が映っていました。イベントも数多く開催していて、コミュニケーションが活発な印象を受けました。
もともと大阪出身で、調布にネットワークがないので、人脈を作るベースとなるようなコワーキングスペースを探していました。設備を契約することではなく、ネットワークの広がりを重視していたのです。
入会して早々に、co-ba CHOFUのネットワークの広さを実感しました。
ワークスペースで調布界隈の診断士会などを調べていたら、「阪井さん、ご紹介したい人がいる」とコミュニティマネージャーに声をかけられました。名刺交換をさせていただいたら、まさに今見ていた診断士会の代表だったのには本当に驚きました!なかなか繋がりたくても繋がれない団体だったのに、たまたまその日co-ba CHOFUを見学に来た会長にばったりお会いできて、無事入れていただくことができました。
会員ランチ会やスナックPolarisなど、会員同士や地域の人との交流の場にも積極的に参加して、ご縁を広げています。

▶会員ランチ会での1枚
―co-ba CHOFUの利用の仕方を教えてください。
現在は、午前中は自宅で仕事し、外で昼食を取った後、co-ba CHOFUで作業するパターンが多いです。Web会議は環境が整っているため、自宅で行います。co-ba CHOFUでは、主にWebで調査をしてまとめたり、資料を作成するなど、一人作業を中心に行っています。自宅で作業していると煮詰まってしまいますが、移動して他の会員がいる中で作業をすることで、気分転換にもなり、集中力が得られます。

―休暇はどのように過ごしていますか?
中小企業診断士の7割は企業に在籍したまま副業していますので、ミーティング等は基本的に土日か平日夜に行われます。またGWもお盆休みも関係なく予定が入ることがあります。その反面、平日の昼間は比較的自由に時間が使えることが多いです。もう少し平日昼間で休むようなリズムを作らないといけないなと考えています。
―調布でお気に入りの飲食店はありますか?
仙川駅が最寄りなので、「OH!膳屋」や、八丈島の魚を扱っている「釣りよし」が気に入っています。
―今後の目標や展望を教えてください。
これからが実際のスタートになりますので、様々な事業者の方々のお役に立てるよう、経験を積んでいくと共に、宇宙に挑戦する企業をまずは3社見つけたいと思います。
そして、いつか月で暮らしたときに、部品が全て「made in JAPAN」だったらうれしいですね。
co-ba CHOFUの会員なら、無料で経営相談にも応じたいと思います。気軽に声をかけてくれたらうれしいです。
独立してからすぐさま、色々な所に出向き、ネットワークや知識を広げている阪井さん。独立しての怖さもありつつ、しっかりと守りも固めるためズンズンと前に進んでいて、まるでその音が聞こえるようです。
「そっち側の人」になるか「こっち側の人」になるかは、本人の決めの問題ですね。
株式会社Chain-GE Partnersの名前には、GE(Great Experience)に繋ぐ(Chain)パートナーになる、という意思を込めたそう。たくさんの中小企業が、素晴らしい世界に繋がりますように。今後のご活躍が楽しみです。
(聞き手 shino)