深刻な日常も「おかしなものがたり」に変えて届ける デザイナー×ダブルケア啓発「tazulabo」大澤 奈保子さん

  • 2026/03/27

京王線調布駅から徒歩1分にある会員制コワーキングスペース「co-ba CHOFU(コーバ チョウフ)」には、様々な仕事をしている人たちが日々集まっています。


いったい、どのような人たちがco-ba CHOFUを拠点に働き、暮らしているのでしょうか。

Vol.20は、「tazulabo」大澤奈保子さんに、フリーデザイナーとダブルケアの啓発活動という、一見異なる二つの活動が、大澤さんのなかでどう繋がっているのか、co-ba CHOFUという場所への想いなどを伺いました。

 

「当事者の視点をイラストに」母の認知症をきっかけに始まった、デザイン×ダブルケア啓発

―現在のお仕事について教えてください。

 現在、お仕事は二つあります。

一つはフリーランスでデザイナー業。専門はバッグや小物のデザイン・企画です。

メーカーとの委託契約やクラウドソーシングを中心に仕事をしています。

ファッションデザインを学び、卒業後はファッション雑貨業界で15年間、会社員としてフルタイムで働いてきました。

 もう一つは、「ダブルケア」の啓発活動です。

育児と介護を同時に担う「ダブルケア」の当事者として、多くの人にその実態を知ってもらう活動をしています。

 

―「ダブルケア」の啓蒙活動をしようと思ったきっかけはなんでしょうか。

 転機となったのは、同居していた母の認知症です。介護のために退職を選び、在宅で仕事を続けるためにフリーランスへ転向しました。

そんな介護の最中に子どもを授かり、介護と育児が同時に押し寄せる「ダブルケア」という現実に直面しました。福祉や周囲の助けを借りて、なんとか日々を生き抜くような毎日でした。

「子ども世代に、自分と同じ苦労をさせたくない」

母が施設に入居し、落ち着きを取り戻したとき、その想いが啓発活動の原動力になりました。

介護の当事者は、日々の生活を回すだけで精一杯で、声を上げる余裕はありません。でも、声を上げなければ社会は変わらない。そう気づかせてくれたのは、介護中に心の支えにしていた、マイノリティの声を拾い上げるあるラジオ番組でした。「私ができる方法で、まだ関心のない人にもこの現実を届けたい」と思いました。


どのように「ダブルケア」の啓蒙活動をされているのですか。

 主に「漫画」を描いています。

表現する上でこだわっているのは、「深刻になりすぎないこと」です。

介護はネガティブなイメージが強く、関心がない人には敬遠されがちです。

だからこそ、大変な日常の中にある「面白いエピソード」を切り取り、漫画にしています。漫画を通じて「ダブルケア」という言葉が、多くの人の中に自然に溶け込んでいけば嬉しいと思っています。

また、今年2月には「ダブルケア月間」に合わせ、初めての個展として4コマ漫画のパネル展『かさなる日々は おかしなものがたり』を開催しました。

(iPadで漫画を書いている大澤さん)

―パネル展は大盛況だったと伺いました!

 ケアに馴染みのない方でも楽しめるよう、専門知識を持つ友人たちによるワークショップも同時に開催しました。実はこの友人たちとはco-ba CHOFUで開催された「スナックPolaris」で出会ったり、co-ba CHOFUの運営会社Polarisが開催したワークショップで知り合ったりと何かとco-ba CHOFUとも縁がありまして。

雪や選挙と重なる悪条件でしたが、co-baの会員さんはじめ想像を超える方々で連日大盛況となり、とても嬉しかったです。

特に心に残ったのは、かつて母がお世話になったデイサービスの職員さんとの再会したことです。「あの時はこうだったね」と涙ながらに語り合った時間は、必死だった当時の私自身が救われるような、温かなひとときでした。

また、そこで出会った漫画家の方に誘われ、2週間後には『ツォモリリ文庫』での追加展示も実現でき・・・co-ba CHOFUでの繋がりから場所や人を介して活動が外へ広がっていく確かな手応えを感じた、記念すべき第一歩となりました。

さらにはイベント開催が地域ニュースになり、それが新聞社の方の目に止まり日経新聞にも掲載いただけました。

「〇〇ちゃんのママ」ではない、ただの自分に戻れる場所。私が一番遠いco-ba CHOFUを選んだ理由

―どのようにco-ba CHOFUを利用されていますか。

 平日午前会員なので、平日4~5日、9時~13時頃まで利用しています。

やんちゃ盛りの3歳の子どもを、co-ba CHOFUから6駅分の距離の保育園に送ってから来るので、着く頃にはヘトヘトで・・

朝子どもを送るのに結構体力を使っている”という言い訳で、11時頃にはお昼ごはんを食べるので、「早弁だ」とみんなから突っ込まれます。(笑)

 デザイナー業はIllustratorを使用して絵型や仕様書を作成し、ダブルケアの活動ではiPadを使用してフリーハンドの漫画やイラストを描くので、MacとiPadを2台持ち込んで作業しています。

 

co-ba CHOFUにはどのようなきっかけで入会されたのですか。

母の同居介護をしていた頃は、自宅で仕事をしていました。母が週に数回デイサービスへ通うようになり、その時間は気分転換を兼ねてカフェなどで作業をしていたのですが、長年会社員だったこともあり、次第に社会的な「人とのつながり」が恋しくなりました。そんな時にコワーキングスペースを検索して見つけたのが、co-ba CHOFUでした。

 

最初はドロップインで何度かご利用いただきましたよね!

 はい、そこでコミュニティマネージャーの方や会員さんが気さくに話しかけてくれて。久しぶりに「〇〇さんの娘」でも「〇〇ちゃんのママ」でもない、“ただの自分”に戻れたような喜びを、今でも鮮明に覚えています。

実は、自宅の近所にもいくつかコワーキングスペースはあって…それでも、あえて一番遠いco-ba CHOFUを選んだのは、運営母体であるPolaris「ここちよく暮らし、はたらく」という理念に、心の底から共感したからです。さらに詳しく調べていく中で、創業者である市川さんの「子育てや暮らしに制約がある人たちのための働く場作り」という想いに触れ、「私の居場所はここだ!」と確信しました。

その後、母の介護施設への入居が決まり、母の気配が消えた自宅に一人でいることが辛くなってしまった時期とも重なり、背中を押されるようにco-ba CHOFUへの入会を決めました。

 

それはとても嬉しいです!実際co-ba CHOFUに入ってみてよかったな、と思うエピソードがあったらぜひ教えてください。

 一番の魅力は、コミュニティマネージャーの方が繋いでくださる「縁」の多さです。

個展の場所探しを相談した際、「イベントに顔を出してみたら?」との助言で足を運んだ先で、以前お世話になった方と1年ぶりに再会。そこから個展の告知記事掲載へと、想像もしなかった展開に繋がりました。

昨年co-ba CHOFUで開催された「『くらすとはたらく』の創刊記念イベント」でも、コミュニティマネージャーさんが「私の活動にリンクしそうな方」をテキパキと引き合わせてくださり、活動を支援してくださる方との出会いが一気に増えました。

また、co-ba CHOFUのランチ交流会で個展の宣伝や活動発表の場を設けていただいたおかげで、「ダブルケア」という言葉をより多くの方に届けることができました。会員さんからデザインの依頼をいただくこともあり、コミュニティの温かさと心強さを日々実感しています。

(ランチ交流会の様子)

多彩なスキルが集まるこの場所で。「ダブルケア」の認知拡大を目指して挑戦は続く

これから挑戦したいことを教えてください!

活動をスタートして、この春でちょうど1年になります。まずは今回の個展をしっかり振り返り、これからの活動の方向性をじっくり考えていきたいです。

また、co-ba CHOFUの会員さんには多彩なスキルを持つ方がたくさんいらっしゃるので、そのお力をお借りしながら、活動の拠点となるホームページ制作などにも挑戦できればと密かに計画しています。

さらに今年の9月は、調布市の「認知症月間」に合わせて、認知症への理解を深めるための新しい企画も温めています。これからもデザインや漫画という私らしい手法で、まだ関心のない方々にも「ダブルケア」や「ケアの日常」を届けていきたいです。

 

インタビューを終えて

 いつも周りをパッと明るい空気にしてくれる大澤さん 。

大澤さんが他の会員さんに気さくに話しかけてくださる姿や、co-baのイベントに積極的に参加して楽しんでくださる様子は、co-ba CHOFUの温かい雰囲気を作る大きな力になっています 。

大澤さんが描く漫画のように、co-ba CHOFUという場所もまた、誰かの日常の小さな『おかしなものがたり』を共有し、時には面白がりながら分かち合える場所であるといいなと思いました。

co-baCHOFUには、多様な職業、働き方、使い方をされている魅力的な会員さんがたくさんいらっしゃいます。

次回記事もお楽しみに。

(聞き手:chika)