仕事でモヤモヤしている時期に、交通事故に遭遇。3週間ほど意識のないまま過ごした出来事が、人生を振り返るきっかけとなり、阿部真央さんはフリーランスに転身しました。
「こんなことを言ってしまったら、事故を肯定しているようで親に怒られてしまうんですけど」と苦笑いを浮かべながら、彼女は当時の心境を振り返ります。
今回は、ファッション誌の編集者を経てフリーランスとなり、co-ba shibuyaに入居した阿部 真央(あべ まお)さんに、これまでのキャリアやco-baとの出会い、今後目指すことなどを伺いました。
阿部さんはフリーランスの編集者として、現在どのような仕事に携わっていますか?
阿部さん(以下、阿部):人気ブランドのファッションが購入できる20代女性向けの季刊誌「SHEL’TTER(シェルター)」や、20代後半~30代前半の女性に大人のファッショントレンドを伝えている季刊誌「Gina(ジーナ)」といった、紙の雑誌の編集が仕事の中心です。最近では、女性向けのファッション系Webメディアのライターにも挑戦しています。
ファッション誌のお仕事をメインでされていますが、もともとファッションに興味があったのですか?
阿部:ファッションというより、メディアの仕事に興味がありました。特にテレビ業界に興味があって、就職活動をしていたんです。
メディア業界に関心を持ったのは、なぜだったのでしょうか?
阿部:家族がテレビ好きだった影響が大きいですね。1人暮らしになってからも、家に帰ったらとりあえずテレビをつけるほど好きでした。自分の生活と深く結びついていたメディアに、仕事として関わりたいなと思ったんです。
でも、就職活動の結果、内定をもらえたのは地元のテレビ局だけ。大学時代に他の人よりも熱心に取り組んだアピールポイントがなくて、就職活動がうまくいかなかったんです。
そのまま、地元のテレビ局に就職を?
阿部:いえ、就職はしなかったんです。地元に帰る選択肢は考えていなかったので、「本当にやりたいことは何だろう」とじっくり考えてみたんです。そうしたら、姉の影響を受けて、中学校のころから毎月2~3冊のファッション誌を購読していることが思い浮かびました。
どんなファッション誌が好きだったんですか?
阿部:「BLENDA(ブレンダ)」という雑誌が好きで。BLENDAは、お姉ギャル系ファッションの中でも人気の存在だったんですよ。
よく購読していたファッション誌で働きたい、と思うようになったのでしょうか。
阿部:そうですね。自分の生活と深く結びついていたメディアに仕事で関わりたいという気持ちは、テレビ業界を志望していたときから変わらずで。採用の募集はしていなかったのですが、編集長に「現場の仕事を学ばせてほしい」と手紙と履歴書を送りました。
手紙を送るのはなかなかの行動力ですね。
阿部:とにかく熱意を伝えなきゃと思ってたんでしょうね(笑)。そうしたら2~3日後に電話がかかってきて、「アシスタントとして働かないか」という話をもらい、何も考えずにオフィスに行って。そのままアルバイトとして採用されました(笑)。
その行動力が採用につながったんですね。何が阿部さんをそこまで動かしたのでしょうか。
阿部:自分の意志をブレずに持っているギャルに、憧れていたんです。私もギャルになりたくて、派手な格好をしてみたり、日サロに通ってみたのですが、外見は変わっても中身までは変われなくて…。ギャルに人気のBLENDAで、取材をしたり、記事を書くことを通して、憧れていた業界に関わりたいという気持ちが強かったんです。
アシスタントから、そのまま就職をしたんですか?
阿部:はい。最初はアシスタント(アルバイト)として働いていたのですが、当時の編集長の好意もあり、大学を卒業してから発売元の角川春樹事務所に社員として入社しました。
ファッション誌の現場で働くのは、勝手ながら大変なイメージがあります。
阿部:2日間くらい会社から帰れなかったり、床で寝ることもありましたが、嫌だとは思いませんでしたね。BLENDAで働いているという喜びのほうが大きかったです。
どのような瞬間に喜びや楽しさを?
阿部:好きなファッションに日々接していられるので、趣味の延長のような感覚で取り組めたんですよね。撮影現場でモデルさんと仕事ができるのも充実感がありました。特に憧れていたモデルの井出レイコさんと一緒に仕事ができたのは大きな喜びでした。
BLENDAに勤めていたのは、どのくらいの期間だったのでしょうか。
阿部:学生のころも含めて、約3年ですね。当時の編集長が独立するタイミングで、一緒に転職をしました。その後、ギャルを卒業したいアラサー世代に向けたファッション誌の編集や、関連するWeb媒体のライター、編集プロダクションなどでの仕事を経験しました。
編プロを中心に転職されてきた中で、独立を決めたのはどのタイミングでしたか。
阿部:Webメディアのライターをしていたとき、どこかで「雑誌の仕事がしたい」という思いがあったのですが、モヤモヤとしたまま仕事を続けていました。そんなときに、交通事故にあって。3週間くらい意識がない状態が続いて、死んでもおかしくない事故でした。
大変な事故でしたね…。その経験を経て、仕事に対する気持ちの変化があった?
阿部:はい。こんなことを言ったら親に怒られてしまうのですが、神様が「やりたいことに挑戦しろ」と私の背中を押すために、人生を振り返るきっかけを与えてくれたと思います。今まではガムシャラに働いていたけれど、一度立ち止まって考えるべきだと。
先輩にも相談してみたら「今から企業に勤めても、愛せる雑誌でない限り長く続かない。BLENDAのように愛せる媒体を見つけなさい」と言ってもらえて。その言葉に影響され、紙媒体の経験を積むため、2018年4月にフリーランスのファッション誌編集者となりました。
フリーになったタイミングでは、どこで働いていたのでしょうか?
阿部:最初は自宅やカフェで仕事をしていたのですが、スケジュールの調整が自分次第になってから、甘えが出てしまったりして。どこかでメリハリをつけようと思って、最初に訪れたコワーキングスペースがco-ba shibuyaでした。
最初に訪れてから、すぐに入居を?
阿部:そうですね。コミュニティマネージャーのぐみさん(吉田めぐみ)と話したのですが、出身が一緒で、同じ年齢だったので、話が盛り上がったんですよ。こういう機会ってなかなかないですよね。何か運命的なものを感じたので(笑)、すぐに入居を決めました。
入居してからの印象などがあったら教えてください。
阿部:フリーランスになって「誰とも話をしていないな」と思うことがあって、少し鬱々(うつうつ)とした気持ちになっていた時期もありました。でも、co-ba shibuyaに入居したことで、自分の居場所ができたような気がしています。
ここが自分の居場所だな、と感じた瞬間はどんな時ですか?
阿部:例えば、仕事が終わってco-ba shibuyaに行くと、ぐみさんが「おかえり」と言ってくれるんです。そういう日々の小さなコミュニケーションが、安心感や居場所を感じられることにつながっているのだと思います。カフェを転々としているときは、悩んだり、辛かったりするときに相談できる人がいなく、会社員に戻ろうと思った日もあったので。
嬉しいお言葉、ありがとうございます…。
阿部:ここ(co-ba shibuya)には同じ業界で働いている人が他にいない分、ただ働いているだけでは出会わない業界の人と知り合います。交流する機会も定期的にあるので、色んな業界を知ることができました。足を運んでみて、本当に良かったなと思っています。
今後も、ファッション誌の編集を続けていきますか?
阿部:そうですね。ファッション誌の編集に携わることができて、今は夢が叶ったと感じているので、一つひとつの仕事をやりきることで、次につなげていきたいです。フリーになったばかりでまだ余裕もないので、少しずつ自分を認められるようになったらいいなと。
最近では、Web媒体でのライターにも挑戦されているんですよね。
阿部:はい。以前の職場での経験が生きて、最近ではWeb媒体での仕事の依頼が増えています。ファッション業界には、紙とWebを両方経験しているライター・編集者は少ないと思います。私は、どちらも対応できるようなライター・編集者になりたいです。
長期的には、新しいファッション誌を作るといったことも考えられていますか?
阿部:新規の案件に挑戦したいという気持ちはありますが、新しく自分で立ちあげることは考えていないですね。取材をすることが好きなので、ファッション業界以外のインタビューにも挑戦できたら良いなとは思っています。色んな生き方を知れたらなと。そういう意味でも、co-ba shibuyaでの出会いを大事にして、仕事の幅を広げていきたいです。
co-ba shibuyaの活用方法について、要望や考えていることがあったら教えてください!
阿部:仕事を円滑に進めるために、co-ba shibuyaは欠かせない存在となっています。今後は、ランチ会やイベントにも参加してみて、色んな人との出会いを楽しみたいですね。
大きな事故を乗り越えてフリーとなり、co-ba shibuyaに巡り合ってくれた阿部さん。日々奮闘する彼女の姿に、私たちも背中を押されています。co-ba shibuyaには、阿部さんのような素敵な会員さんが多いので、気になっている方はぜひ遊びに来てみてください!
[Profile] 阿部 真央
編集者/ライター1987年生まれ、宮城県出身。中央大学卒業後、新卒で角川春樹事務所に入社し、女性ファッション誌BLENDAの編集ライターに。その後、編集プロダクションで経験を積んだのち、2017年4月にフリーランスに。現在は、ファッション系の紙媒体の仕事を軸に、女性向けWEBメディアのライターとしても活動中。
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