「プロダクトを通して、時間や場所にとらわれずに働く“自由なワークスタイル”を世の中に広げていきたい」
そう笑顔で語るのは、ノマドワーカー向けの雑貨・文具ブランド「ユウボク東京」を展開する合同会社ユウボク代表の佐藤弘章さん。
佐藤さんは今、co-ba shibuyaの会員と力をあわせ、プロダクトづくりに取り組んでいます。ノマドワーカー向けのブランドを立ち上げたきっかけや、co-ba shibuyaでコミュニティでの「共創」に挑む理由について、お話を伺いました。
——会社を立ち上げたのはなぜだったのでしょうか?
佐藤:昔からガジェットや文具に興味があり、起業前はモバイルアクセサリーの販売会社で働いていました。そこで培った知識や経験を活かして事業を立ち上げたいと考えたんです。
——前職では具体的にどのようなお仕事をされていたんですか?
佐藤:ネット通販の店舗運営を担当していました。当時は、とても人見知りだったので、パソコンに向き合っている仕事が性にあっていましたね。
——そうなんですか!co-ba shibuyaでは積極的にコミュニケーションを取っていらっしゃるので、少し意外です。
佐藤:あの頃は今と全然違いましたね。ほとんど人と話さなかったですから(笑)でも、ある出来事をきっかけに人と話すことが好きになっていったんです。
——どのようなきっかけがあったのですか?
佐藤:働き始めて8年目ぐらいに商品部へ異動したんです。バイヤーとして、メーカーの担当者から新商品の情報を集め、世の中のトレンドを読みつつ、仕入れをする仕事です。何気ないコミュニケーションも交渉を進める上で鍵になる。パソコンだけに向き合っていた仕事から、いきなり密なコミュニケーションが求められるようになったんです。
——人と話すのが苦手なのに…(笑)
佐藤:最初は大変でした(笑)でも、メーカーの担当者とは、新しい商品などの話で盛り上がることも多く、徐々に会話を楽しめるようになっていきました。それまで知らなかったメーカーや商品との出会いも増え、商品展開の幅を広げることができました。
——苦手意識を克服できただけでなく、仕事にもポジティブな影響があったんですね!
佐藤:そうですね。もうひとつ学んだのが、世の中には「会社員」以外にも働き方があることでした。
取引先には、フリーランスもいれば、自分のブランドを立ち上げた起業家もいます。彼らは、働く時間や場所を自由に選択し、やりたいことを実現している。その姿を見て「世の中にはこんな働き方もあるのか」と衝撃を受けました。とくに「時間や場所」に囚われないノマドワーカーという働き方に、とても惹かれたんです。
一度きりの人生なら、自分も自由に生きてみたい。徐々にその思いが強くなり、独立を決意。合同会社ユウボクを立ち上げ、ノマドワーカーとして自由な働き方を実践し始めたんです。
——合同会社ユウボクでは、主な事業として、多様で柔軟な働き方を応援するワークスタイルブランド「ユウボク東京」を展開していますよね。事業のアイディアはどのように生まれたのでしょうか?
佐藤:ノマドワーカーとして働き始めると、「時間や場所」に縛られない一方、不便なこともあるなと思ったんです。例えば、仕事用のデバイスや充電器など、大量の荷物を持ち歩いて、カフェやコワーキングスペースを行き来しないといけません。
不便だなと思って、ふと周囲のノマドワーカーを見たら、彼らのパソコン周りも雑然として見えたんですよね。そこで仕事道具を入れるために「持ち運びやすく」「取り出しやすく」「しまいやすい」ポーチをつくろうと考えました。
ノマドワーカーとしての経験と雑貨販売の経験。この2つが掛け合わさって、ノマド向けのワークスタイルブランドというアイディアに結実していきました。
——第一弾のプロダクトは、ノマドワーカー向けのポーチ「デイズポーチ」ですよね!洗練されたデザインが素敵です。
佐藤:デザインも自分自身をペルソナにして考えています。機能や色など「使いたい」と思えるものになるまで試行錯誤を重ねました。
その結果、自分なりに「最高だ!」と感じるサンプルが出来上がったのですが、一人で会社を経営していたので、周囲に相談できる人がいなくて…。本当に世の中に受け入れられる製品になっているのか自信が持てなかったんです。そこで、人から意見を聞きながらモノづくりができる環境を探し始めました。
——探しているなかで出会ったのが、co-ba shibuyaだったんですね。
佐藤:そうなんです。「多様なチャレンジが集まるワーキングコミュニティ」というコンセプトを知り、ピッタリだと感じました。
——実際に入居してみて、いかがですか?
佐藤:予想以上に会員のみなさんが協力的で、一緒にモノづくりができている感覚があります。以前、別のコワーキングスペースに入居していたことがあったのですが、会員同士の交流がほとんどなくて…。でも、co-ba shibuyaでは、デイズポーチの試作品を持っていったら、とても具体的なフィードバックをもらえたんです。
——どんなフィードバックがあったんですか?
佐藤:最初につくったサンプルは表にポケットを開けるための紐がついていたんです。でも、「紐は邪魔になるから普通のポケットが良い」という意見がでて、通常のポケットに改良しています。他にも、女性の会員さんから「もっとカラーバリエーションを増やしてほしい」と意見をいただきました。
(写真左から右の完成品にかけて、ユーザーヒアリングを重ねてブラッシュアップした様子がうかがえる。)
——集まったフィードバックは積極的に反映しているんですね。
佐藤:co-ba shibuyaには、フリーランスや起業家など、「時間や場所に囚われず自由に働く方々」が集まっています。まさにユウボク東京が応援したい人たちですから、なるべく彼らの意見を取り入れたいと考えています。
また、co-ba shibuyaには、プロダクトに対してフィードバックをくれるだけではなく、PR動画の撮影を手伝ってくれた方もいました。
——まさにコミュニティと一緒にモノづくりができているんですね。
佐藤:そうですね。co-ba shibuyaというコミュニティの力を借りられたからこそ、プロダクトもPRも、グッと質を高められました。人との関わりがより良いモノづくりにつながるのだと実感しています。
https://youtu.be/TQkNvwGaFP0
(協力を得て制作したPR動画より)
——現在は「デイズポーチ」の制作・販売に向けたクラウドファンディングも行っていますよね。反応はいかがですか?
佐藤:現在は650名を超える方から支援が集まっています。自分の掲げたコンセプトに共感してくれる人がいるのだと自信につながりました。
——これからユウボク東京として挑戦していきたいことはありますか?
佐藤:今、ちょうど第二弾の商品を企画中です。今回は、企画段階から積極的にコミュニティを巻き込んでいこうと考えています。
——それは楽しみです!具体的にはどのように進めていく予定なのでしょうか?
佐藤:近々、co-ba shibuyaの会員の方から、モノづくりに興味がある人に集まっていただき、新商品の企画会議を開催します。
「自由なワークスタイルを実践する人にとってどんな商品があったら嬉しいか」をワイワイ話し合う予定です。企画会議から制作過程を動画やSNS上などで随時公開していきたいと考えています。
——企画会議からすべてですか…!それはどうしてでしょう?
佐藤:「新しいモノづくりのプロセス」を世の中に広げたいからです。ユウボク東京には大企業のような資金力や人材力があるわけではありません。
しかし、co-ba shibuyaのようなコミュニティで人とつながり、チームのように協力し合うことで、これまでにない魅力的な商品を生み出すことができました。時間や場所に囚われない自由さと、チームで動く面白さを両立する働き方、その可能性を社会に示していきたいんですよね。
(インタビュー後に佐藤さんが企画したヒアリングランチ会の様子)
——プロダクトだけでなく、ユウボク東京の活動自体が、「自由で多様な働き方」を体現しているんですね!
佐藤:普段は別々の仕事をしている人同士がチームをつくり、これまでにない価値を生み出す。ユウボク東京を、そんな新しい働き方の可能性を広げるブランドに育てていけるよう、これからも頑張っていきたいです。
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コミュニティの可能性を存分に生かしつつ、次の挑戦を見据える佐藤さん。co-ba shibuyaに集まる会員の力が合わさり、どのような新しい価値が生まれるのか。これからの展開が楽しみです。
[Profile] 佐藤弘章
合同会社ユウボク 代表1983年生まれ。
2006年より、新卒から大手携帯アクセサリー販売会社へ入社。
入社当初は、自社運営でのEC店舗運営を歴任し、仕入部門を担うチーフバイヤーを担当。過去、百数十社を超えるメーカー・商社・問屋など、数多くの企業との交渉経験をし、また、新規も数多く開拓。売上へ貢献し、市場を広げた。
現在はフリーのバイヤーとして独立し、2018年11月「合同会社ユウボク」を設立。同時に「渋谷から生まれたワークスタイルブランド”ユウボク東京”」を立ち上げた。
twitter:https://twitter.com/youboku_tokyo
HP:https://www.youboku.tokyo/