みつばちと一緒に調布の街を飛び回る!~環境建築コンサルティング 株式会社ヴォンエルフ 児島秀樹さん

  • 2022/07/27

京王線調布駅から徒歩1分にある会員制コワーキングスペース「co-ba CHOFU(コーバ チョウフ)」には、様々な仕事をしている人たちが日々集まっています。

いったい、どんな人たちがco-ba CHOFUを拠点に働き、暮らしているのでしょうか。

Vol.9は、会社勤めをしながら、週末に調布市内でみつばちプロジェクトを展開する児島秀樹さんです。
数年前までは「自宅マンションを出たら、全員他人。都会暮らしってこういうものか」と思っていたそう。今では、お住まいの仙川エリアを歩けば色んな人が声をかけてくれて楽しい!と児島さん。
会社員でありながら、地域コミュニティでも活躍するようになった経緯を伺っていきましょう。

 

今の仕事について

 

ー自己紹介をお願いします

 

株式会社ヴォンエルフという環境建築コンサルティングの会社で仕事をしている児島秀樹です。

もともと建設会社などで建築設計の仕事をしていましたが、数年前に地域活動を通じて「環境」に興味を持ち、建築と環境を融合した「グリーンビルディング」という分野の仕事に2年前に転職しました。建物や街の環境性能を見える化(ポイント制)することで、基準が曖昧で見えづらい価値を分かるようにするというものです。具体的にはLEED認証という国際認証を扱っています。

主には、エネルギー消費、水消費、CO2排出負荷、リサイクル材他などを定量的に評価して、その建物、街のもつ環境性能を評価していくもので、最終的にはポイントごとにランク分けされて認証されます。(副業として、一般社団法人グリーンビルディングジャパン 事務局長としての業務も行っています)

 

 

―建物や街の環境性能について、詳しく教えてください。

 

環境性能については、「建てる過程」と「建てた後に使う時」の2つに分けて考えていきます。環境負荷が低い建物を「環境性能が高い建物」と評価します。

建てる過程では、石油や水をなるべく使わない、CO2をなるべく出さない、といった点に配慮していきます。
例えば、輸入された建築資材を使うのではなく、建設現場に近い地元の建築資材を使うというのも、環境負荷を少なくする方法の1つです。国産の資材はコストが高くなるけれど、これからの時代は、コストだけではない判断基準が必要だと考えています。

建てた後は、「エネルギー消費が少ない」という点が評価ポイントになります。
空調設備や照明設備が省エネ対応になっていたり、断熱効率が高い建物を建てると、建設後に使っていく中でエネルギー消費が抑えられるため、環境負荷が少ないと評価できます。

 

―地域活動がきっかけで、今の会社に転職したのですね。

 

私が調布で行なっている養蜂が、今の会社に入ったきっかけになりました。
「企業で養蜂しませんか」とFacebookで投稿したところ、今の会社の代表が興味あると声を掛けてくれました。
養蜂活動は、私が主宰するグッドモーニング調布!という市民活動団体にて行っています。
自分が住むまちや地域の人に「おはよう!」と声を掛け合える日常になったらいいな、という思いを込めて、この活動名を付けました。

元々は、早朝のまちのゴミ拾いから始まった活動ですが、そこから緑化活動、みつばちプロジェクトに繋がりました。ゴミを拾いまちをきれいにして、花を植え、その花に来るみつばちから蜂蜜を採ろうというプロジェクトです。

調布市仙川町に住んで10年経ったころ、調布に友達がいないことに気づいて、何とかしようと始めた活動です。今では、多くの友人知人ができました。最近は、街の養蜂家を増やす養蜂スクール(仙川、深大寺)や小学生向け環境教室「グリーンスクール調布」などを年間プログラムとして実施しています。
キャッチフレーズは、「住みたい街は創ることができる。街のキャストになろう!」です。
今は、23万人のグリーンコミュニティを創ることを目指して活動しています。

―23万人!調布の人口ですね。

 

co-baを仕事の拠点に選んだ理由

 

―wifiさえあればどこでも仕事ができる今、co-baを仕事の拠点として選んだ理由はなんですか?

 

地域活動が活発になってきて調布市役所やたづくりなどに行く用事が増えたので、調布駅近くに拠点が欲しかったからです。
調布全域で自分の活動を広めたいと考えているため、調布駅前に拠点があることは、活動的にもメリットがあると考えました。

また、co-ba CHOFU運営会社であるPolarisはもともと仙川に事務所があったこともあり、以前から知り合いで、Polaris主催イベントに登壇するなどご縁がありました。

ここ2年くらいはテレワークが多く、1人で仕事することも多かったのですが、あまり心地いいものではなかったんです。
co-ba CHOFUが移転して駅近になり、地下にあった頃にはなかった大きな窓があると知り、「そうだ、コーバにいこう。せっかくなら、知っている人たちのところにいこう」と思って入会しました。

今は週に2-3回、朝9時から19時くらいまで利用しています。

 

休日の過ごし方

 

休日は、みつばちプロジェクトに関することで調布市内を飛び回っています。地域にたくさん知り合いもいるので、毎日が楽しいですね。

以前の会社では、社内で友達が作れませんでした。出世競争のライバルだったりして、同僚はいても、友達と呼べる関係ではありませんでした。「この人と仲良くしておけば出世に有利」といった打算的な損得勘定の人間関係は、自分も回りからそう見られているわけで、そんな付き合いに疲れていました。

グッドモーニング調布!の活動を通して知り合う人たちは、「調布でこういう暮らしがしたい」という共通の思いで繋がっていくので、とても気持ちよく楽しいです。

 

ー「地域コミュニティ」「地域の付き合い」というと、面倒臭いという印象を持つ人もいるかもしれません。

 

僕は、この調布で実現したい夢があるので、人付き合いは全く面倒と感じないですね。知り合いが増えれば増えるほど、みつばちがいろんなところで飼えるようになって、緑が豊かな調布にどんどん近づいていけます。できることなら調布のみなさん全員と知り合いになりたいくらいです(笑)

最初からこんな風に思っていたわけではないんです。普通に会社員だけやっているならば、日々そんなことを考えることはないと思います。

この活動を始めるまでは、自宅を一歩出れば、周りは全員知らない他人ばかりでした。自宅近くの仙川駅前にはあんなに人がいるのに、10年住んでも自分の知り合いが一人もいないんです。静岡県出身で、ご近所コミュニティが活発な環境で育ったので、「都会に暮らすって、こういうことか」なんて思ったものですが、本当にこのままで自分の人生いいのか?と自問自答したところから変わりました。駅前を歩いているときに意外とポイ捨てゴミが沢山落ちていたので、早朝出社前にゴミ拾いをするようになりました。ゴミ拾いを通して、まちに主体的に関わるようになったら、目の前に見える景色が一気に変わったのです。

街ですれ違う知り合いが増えたのはもちろんのこと、既存コミュニティである町内会の人たちも、自分の活動について興味を持ってくれたり、みつばちが飼えそうな場所を持っている人に繋いでくれたりと、みつばちを介することで、地域で会ったときの会話の内容が変わっていきました。

自分の心持ち一つで、地域に対しても人に対しても、見え方や関わり方が変わっていくと思います。

 

 

これから挑戦したいこと

 

調布の空全体を、私たちが育てたみつばちで占拠したいですね(笑)。みつばちの飛ぶ範囲は約2~3㎞なのでバランスよく4か所ぐらい市内に設置できれば、調布全体を網羅して、調布のすべての街の花から採れた蜂蜜を採ることができます。

5年前からは街に養蜂家を育てる養蜂スクールをやっていて、卒業生が始めた場所(3か所)を含めると、既に5か所あります。もっともっと、街の養蜂家を増やしていきたいと思いますし、そのために調布駅前のビルでも場所(屋上)を探しています。

養蜂家が増え、調布のみつばちが増えるためには、農薬が使われない地域であることも重要です。現実的にはなかなか難しいことは分かっていますが、農薬によるみつばちの大量死なども発生していますので、低農薬で栽培できる都市農業になるといいなと考えています。元気なみつばちがたくさんいれば、受粉もしてくれますので、野菜も採れて、はちみつも地元でたくさん手に入るようになります。

養蜂スクールを通して毎年10人くらいずつ養蜂家が調布に誕生しているので、今後安定的にはちみつが採取できるようになったら、調布市のふるさと納税返礼品として、各エリアで採れたはちみつの詰め合わせを味比べセットとして商品化できたらいいですね。co-ba CHOFUの皆様も、是非スクールに参加して街の養蜂家になっていただけたらと思います。

また、養蜂家を育てるだけでなく、実際に自宅マンションや自宅ビル屋上で養蜂を始めたい個人法人の方向けに、養蜂コンサルティング業務にも力を入れていきたいと考えています。私は元々自宅マンションで養蜂プロジェクトを始めました。都市養蜂の多くはビルの屋上で行われていますが、マンション養蜂の事例は少ないです。都市養蜂で最も難しいのは、合意形成と近隣対応です。私はこの部分が得意なので、そのノウハウを皆様に有償サービスとして提供していければと考えています。実際に、現在都内某所(市外)にて問合せが来ています。

依頼が増えて来たら「東京の地域コミュニティを再生する」をコンセプトに、いつか「グッドモーニングTOKYO!」と言っているかもしれませんね。

 

インタビューを終えて


本業がありながら、コツコツと、そしてどんどんパワーアップしながら活動を続けている児島さん。「好き」「夢」に向かって飛び回るオトナ、素敵です。

それでは、次回インタビューもお楽しみに。(shino)