co-ba koriyama 起業家インタビュー2020春③株式会社しろくまデザイン研究室 馬場知子さん

  • 2020/03/25

2020年2月から3月まで、インターンシップ生として活動した池田明日香さんと富永実穂さん。

インターンシップ期間中co-ba koriyama利用者の方、郡山で起業された方や郡山市の起業家支援に取り組む行政の方にインタビューをしていただきました。

愛知県から福島県に移住し、デザイン事務所を経営している馬場知子さん。お仕事への思いや、今年から会員になったco-ba koriyamaについてお伺いしました。

 

はじまりは研究会のロゴ

―まず馬場さんのお仕事内容からお伺いしていきたいと思います。

馬場さん:デザイン事務所をやっています。ブランディングや、チラシ、名刺、パンフレットなどの印刷物や看板のデザイン、ホームページの制作をしています。あと、会社の中に入っている業務ソフトやパソコンのネットワークを構築したり、自社サーバーを立てたりもしています。

―でも、大学時代は獣医学部に通っていたんですよね。大学の教授からロゴマークを依頼されたことがデザインのお仕事の始まりだったそうですが、もともとデザインに興味があったんですか?

馬場さん:全然そういうわけではないんです。大学在学中に父が亡くなり、金銭的に厳しくなってあと1年を残し自主退学しました。すごく落ち込んだしみんなからも止められて、当時は本当に悩みました。小学生の頃から、母に手に職をつけて自分の収入で食べているようにしなさいって言われていたんです。だからなりたい職業を選んだというより、自分で食べていける職業に就こうと思って獣医師を目指した、という感じです。そして、獣医師への道をあきらめたとき、目の前にあったのが1台のパソコン。これでなにかできないかなと考えて、デザインならできるかもと思ったんです。それで、私が大学時代に入っていた、「獣医放射線学教育研究会のロゴをつくってみないか?」って見かねた先生が言ってくれて。そのロゴはまだ使ってくれていてうれしいですけど、ちょっと恥ずかしいです。それが初めてのお仕事らしいお仕事でした。

―開業してからはどうやってお客さんを増やしていったんですか?

馬場さん:紹介です。営業したり広告を出したりすることはほとんどしてないです。福島の人はいい人が多くて本当に助けられています。結婚を機に福島に来たんですけど、当時の旦那さんの会社の関係者の方や、中小企業家同友会でのつながりなどのおかげでお仕事の幅が広がりました。その旦那さんとは別れてしまったんですけど、感謝しています。

 

私だけ出ていくなんてできない

―離婚や震災を経験して、地元の名古屋に帰ろうと思ったことはないのですか?

馬場さん:震災のときはさすがに思いました。でもほんの一瞬だけです。あのころはお客さんも増えてきていたので、震災でみんな大変なときに私だけ名古屋に帰るなんてできませんでした。あと、私は大学時代に放射線学研究室に入っていたのでなにかできることがあるかもしれないと思って、当時大学で講師をしていた後輩と相馬に行って放射線量を計測したり、放射線について説明したりしました。福島の人は本当に優しくて、最初の頃にお仕事を紹介してくれた相馬の方たちに今もずっとお世話になっているので、力になれてよかったです。

 

拠点にもイベント会場にもなるco-ba koriyama

―co-ba koriyamaのことはどうやって知ったんですか?

馬場さん:スペシャリスト女子会(なにかを始めたいと思っている女性に向け、毎月co-ba koriyamaでセミナーや講座を開催しているコミュニティ)を紹介してもらったことがきっかけです。その会場がco-ba koriyamaで、それから利用するようになりました。利用し始めて仲間も友達も増えたし、面白い人もたくさんいます。今年の1月にはついにco-ba koriyamaの会員になりました。

―会員になったきっかけはなんですか?

馬場さん:再婚して、今は自宅兼事務所がある須賀川にいるんですけど、拠点がほしいと前から思っていたんです。あと月に1回「クリエイターごはん会。」という食事会を開いていて、co-baは駐車場もあるし広さもちょうどよくて、会場として使いやすいんです。仕事の交流ができるのもいいですね。なにか頼みごとがあったときはco-baの人に気軽に頼めるので助かります。あとはコミュニティマネージャーのかわいさに癒されたり……(笑)。

 

「ありがとう」でまわる経済を

―これからの目標ややりたいことを教えてください。

馬場さん:自分がしてもらってきたことを起業家さんや若手の方にしていきたいです。昔、自分が困っているときに声をかけてもらってすごく助かったしありがたかったので、そういうことを自分もさりげなくできるといいなと思っています。だから、ものをつくることを目的に働くのではなくて、その先にある想いのために働こうと思っています。

―では、馬場さんのデザインの先にある目的はなんですか?

馬場さん:みんなを幸せにしたい、っていうことです。私は、デザインを通して困っている人を助けて「ありがとう」って思ってもらって、その対価ではじめてお金をいただけると感じています。「ありがとう」がなくてもお金をいただける仕組みはあるけど、そうじゃなくて、感謝によって経済が、社会がまわるようにしたいです。

―なんだかお話を聞いていると、福島県でいろんな人に助けてもらい、自分が食べていくために仕事をするという考え方から、ほかの人のために仕事をするという考え方に変わったように思います。

馬場さん:そうですね。昔、プライベートでの人間関係が本当につらくて、誰にも相談できないと思っていた時期がありました。でもあるとき中学の同級生とお互いの近況を話したんです。そのとき、自分を俯瞰して見たことで、私は福島のいろんな方のおかげで今仕事ができている、生きていけているって気づけたんです。お世話になった人たちからもらったものをみんなに還元したいって思うと、自分のやるべきことが見えてきました。そうやって周りも見えてくるようになって、お客さんとはお金で結ぶ関係だけでなく、人としての信頼関係ができてきて、より大切にしようと思いました。これからも大切なものを、大切にしていきたいです。

 

 

何度も「福島の人は本当に優しい」とおっしゃっていた馬場さん。その思いを大切にしながらお仕事をされている姿を尊敬します。

馬場さん、ありがとうございました!