2020年2月から3月まで、インターンシップ生として活動した池田明日香さんと富永実穂さん。
インターンシップ期間中co-ba koriyama利用者の方、郡山で起業された方や郡山市の起業家支援に取り組む行政の方にインタビューをしていただきました。
「起業関連のイベントに行くと必ずいるよ」と起業家さんたちに言われる深谷さん。
そのアクティブさが一般的な市役所職員のイメージと違うと言われる深谷さんですが、なぜ「少し変わった市役所職員」になったのか、その理由と郡山市の起業家支援策について迫りました。
今の民間と郡山市の関係は理想形
―深谷さんのお仕事内容を教えてください。
地元の企業さんに売上を伸ばしてもらって雇用を生み出してもらい、地域にお金が回るようにお手伝いするのが私の仕事です。具体的には郡山商工会議所、商工会や金融機関、商店街や工業団地の団地会などの団体に支援情報をご案内したり、補助金を交付したりしています。それと並行して起業家支援の仕事もやっています。起業家支援については、郡山商工会議所や金融機関などの支援事業者と連携しながら起業家の育成をしています。
―盛りだくさんなお仕事ですね。起業家支援について詳しく教えてください。
平成26年に産業競争力強化法という法律が制定されました。起業家育成をしっかりやりましょうという法律で、それに基づいて民間の支援事業者と地方自治体が一緒になって計画を作り、経済産業省から計画を認定されれば、計画による事業で支援された起業家さんにとってメリットがありますよという内容です。例えば、昨年9月から12月にかけてグロウイングクラウドが開催した「SDGs時代の起業家育成プログラム」は、この講座を修了して会社を立ち上げたら、法人の登録免許税が半額になります。このように郡山市が直接講座をやるというよりは国の制度をうまく使って、民間の支援事業者に民間のノウハウを活用しながら事業をやってもらえるように我々は仕事をしている、そんなイメージですね。行政が一方的に力を入れているというよりは、もともと郡山市では、民間の支援事業者も一緒にやっていきましょう、という雰囲気があったのでうまく連携できていると思っています。
―民間と行政の理想的な形ですね。
そうですね。市役所の産業政策課と言っても、我々は経営のプロではありません。経営や起業家育成のプロの方が本領を発揮できるように環境を整えるのが行政の役割かなと思っています。
机に向かって事務仕事をするだけが市の職員じゃない
―いろいろなところで「いい意味で変わった市役所職員さん」として深谷さんのお名前をお聞きするのですが、「変わった市役所職員」になったきっかけはなんだったのでしょうか。
産業政策課に来る前に職員研修を担当していたのですが、そのときに、郡山市以外の自治体の面白い職員と知り合う機会があったんですね。そこで、今まで自分が知らなかった市役所職員としての生き方を知りました。例えば、「東北まちづくりオフサイトミーティング」という自治体職員有志のネットワークがあるんですけど、それを立ち上げた山形市職員の方に影響を受けて、机に向かって黙々と事務仕事をするだけが市役所職員じゃないんだな、って気づきました。それが今に繋がっているので、なるべく起業関連のイベントに行って、起業家さんたちと話すようにしていますね。
ちいクラのオーガナイザーになりたかった
―地域クラウド交流会にはどのような思いで携わっていらっしゃいますか。
こんなことを言ったらおこがましいですが、完全に当事者だと思ってやっています。地域クラウド交流会(ちいクラ)をやるためには、オーガナイザー希望の方がサイボウズの研修を受けて認定を受けなければなりません。郡山市でちいクラをやりたいなと思っていたとき、東北経済産業局から東北枠でオーガナイザーの研修派遣の予算を取ったとの連絡がありました。自分が研修に行きたかったんですけど、人事異動で他の部署に行ったらできなくなるからだめだって言われて、そこでグロウイングクラウドの代表である三部香奈さんにお話を持って行ったら、やりたいと言ってくれたんです。東北経済産業局の審査も通り、サイボウズの研修も修了して、郡山市でできることになりました。このように最初は自分も関わっていたので、郡山市で今まで開催した2回とも200人以上集まっているのは本当に嬉しいな、って思いますね。
二者の課題を同時に解決するサービス
―深谷さんが今、気になっている事業アイデアを教えてください。
ちいクラの歴代優勝者の鷲谷恭子さんと片岡悠人さんの共通点を自分なりに分析してみました。鷲谷さんは短時間で働きたいというママさんと、会計処理を外注したいという企業さんの両者の需要をうまくマッチングしていますよね。片岡さんも業務効率化したいというお医者さんと病院にいる時間を短くしたいという患者さんの両者の需要をうまくマッチングしています。二者の課題をうまく組み合わせて解決できる方は素晴らしいなと思いますね。
そのほか、新型コロナウイルスの影響や5Gの導入で働く場所や活動する場所の考え方が変わってきています。これからは、遠隔の技術をうまく使った起業家さんが伸びてくるんじゃないかなと思います。
これからの郡山市
―郡山市の展望を教えてください。
郡山市は、製造品出荷額が東北第3位、商品販売額は東北第2のまちです。ただ、昨年10月の台風で製造業は大ダメージを受けました。さらに、新型コロナウイルスの影響で、飲食業や観光業、卸売業、サービス業、製造業など様々な企業さんの売り上げが減少しています。そんな状況で、企業さんの売上回復をどのようにお手伝いできるか、それを考えるのが最優先事項かなと思っています。また、郡山市としては、首都圏や海外に事業進出して外貨を地元に還元する企業さんを支援していく方針を出しています。そのような企業さんの事業活動をお手伝いしていくことも、今後の課題なのかなと思います。
終始丁寧にお話ししてくださった深谷さん。
「起業家さんとお話をしていると一緒にやっている気分になって楽しいんですよね」と笑顔で語るその姿からは、郡山市の起業家さんたちの拠り所となる温かさを感じました。