音楽を共有する喜びをWebで実現したい――。音楽ストリーミングサービス「Spotify」のプレイリストを共有できるサービス「DIGLE(ディグル)」は、「人と人をつなぐツールとしての音楽を復活させたい」という創業者の情熱から生まれました。
DIGLEのユーザーはSpotifyで作成したプレイリストを投稿し、他のユーザーのプレイリストに「イイね」やフォローができます。人気が出るとランキングにも掲載されるといった機能も有しています。
DIGLEを運営するのは、co-ba shibuyaの入居者である株式会社CotoLab.です。今回は、共同創業者である西村謙大さんと山田祐真さんのお二人に話を伺いました。
西村さんと山田さんが共同でCotoLab.を創業されたんですよね。まず起業した経緯について教えてください。
西村さん(以下、西村):山田と出会ったのは、コーヒー1杯を飲む時間を一緒に過ごしたい人と出会うための「CoffeeMeeting(コーヒーミーティング)(※1)」で声をかけたのがきっかけでした。
山田さん(以下、山田):お互いバンド経験があり、音楽好きだったため、CoffeeMeetingで自身のプロフィールに「音楽」と付けていて、お互いのことが気になったんですよね。
西村:そうですね。
山田:当時、西村が大阪在住で、僕は東京に住んでいました。マッチングした日に、僕が夜行バスで大阪まで会いに行って、「音楽×ITでサービスを作ろう」と盛り上がったことを覚えています。意気投合してそのまま起業することに(笑)。
創業当初からco-baに入居いただいていますよね!
西村:最初は事業アイデアのひとつに「クリエイターが集うコワーキングスペースの運営」がありました。それで運営のノウハウを学ぶためにco-baを訪問したんです。
場を作るとなると固定費がかかりますし、ノウハウも簡単に得られるものではないことがわかり、いきなり手を出すのは難しいビジネスだとわかりました。まずはco-baで運営のお手伝いをしながら、入居することにしました。後に知ったことなのですが、CoffeeMeetingの開発者もco-ba shibuyaの卒業生だったんですよ。どこか運命的なものを感じましたね。
運営側を経験してみて、いかがでした?
西村:入居者同士をつなげるコミュニティ形成の方法が、大きな学びでした。立ち上げるビジネスはWebサービスになりましたが、コミュニティ形成のノウハウを学んだことで、自分たちで音楽イベントを開催するときの参考になっています。
どうやったら参加者同士の会話が生まれるのかを考えたり、1人でいる人がいたら声をかけたりと、人と人のコミュニケーション設計に気を配れるようになりましたね。
入居者という視点では、良かったことなどはありましたか?
山田:コミュニティマネージャーの方が、他の入居者と交流する機会を作ってくれます。2人だけで仕事をしていると音楽のことばかり考えて、視野が狭くなりがちです。他の入居者との交流から、違う分野の知見を得られるのはco-baの良いところかなと。
▲ DIGLEのWebサイト
その後、お二人は音楽×ITの領域でサービスを模索していく中で、DIGLEにたどり着きました。なぜSpotifyを活用したプレイリスト共有サービスを手掛けたのでしょうか。
西村:音楽を通じたコミュニケーションが生まれる世の中を創りたいからです。私が学生のころはMDが主流だったのですが、友人とMDを交換することで新しい音楽に出会えたり、その人と仲良くなれました。音楽がコミュニケーションツールになっていたんです。
今はSpotifyなどのストリーミングサービスが登場したことで、MDを作る人もCDを買う人もなかなかいません。私たちが過去に体験した音楽を通したコミュニケーションを、Web上のプレイリストを通して実現したくてDIGLEを立ち上げました。
コミュニケーションを生むために、どのようにサービスを設計していますか?
山田:最初はSpotifyのアカウントを連携し、プレイリストを投稿できるだけのサービスでした。プレイリストを投稿してくれる人は増えていったのですが、ユーザー同士のコミュニケーションが生まれませんでした。2018年に入ってサービスをリニューアルし、ユーザーがお互いをフォローしたり、「いいね!」したりと、コミュニケーションのための機能を実装しました。今後はコメント機能なども実装していく予定です。
Spotify以外にも音楽ストリーミングサービスはありますが、Spotifyを選んだのはなぜでしょうか。
西村:事業のアイデアを模索していたときに、Spotifyが日本に上陸しました。2016年の秋ですね。
Spotifyの運営や提携する音楽メディアなどが作る公式のプレイリストは見つけやすい。ですが、DJやアーティスト、リスナーが作ったものは検索しないと見つけられません。DJやアーティストが作ったプレイリストを知りたいユーザーも多いんじゃないかなと。
Spotifyが抱えていた課題をユーザー目線で解決しようと考えたわけですね。
西村:DIGLEは、Spotify上で検索しにくいプレイリストが発見され、質の高いプレイリストが評価される仕組みにしていきたいですね。
プレイリストを投稿するDJやアーティストにとって、ユーザーに”発見してもらうこと”以外に、投稿のインセンティブはあるのでしょうか。
山田:DIGLE内のデータや、プレイリストに対するソーシャルメディアの反応を集めたアナリティクスツールを提供予定です。
DIGLEでは、アーティストでも使いこなせるアナリティクスツールだけではなく、分析したデータを活用したデジタルマーケティングをサポートするサービスの提供も考えています。
アーティストや音楽レーベルのデジタルマーケティングを支援することを、マネタイズの手段として考えられているということですね。他には何か考えられていますか?
山田:ユーザーから支払ってもらう、月額課金モデルの構築も考えています。たとえば、月額1000円を払ってくれたら、毎月ライブに参加できたり、オリジナルコンテンツを見ることができるといった特典を受けられるサービスにしていきたいです。
▲ アーティストへのインタビュー記事などを公開する「DIGLE MAGAZINE」も運営
最後に、今後の展開についても教えてください。入居当初はクライアントワークも並行しながらサービス開発に取り組んでいましたよね。
山田:クライアントワークは辞めて「DIGLE」の事業に集中するという決断をしました。そのため、サービスを伸ばしていくためにお金が必要で、現在資金調達中です。
DIGLEを成長させるために、事業に集中するタイミングなんですね。DIGLEは今後どのようなサービスになっていくのでしょうか?
西村:ストリーミング時代の総合音楽プラットフォームを目指したいです。たとえば、新しいアーティストの楽曲を聞いて「良いな」と思ったら、ユーザーがグッズを買うことができたり、イベントの参加まで可能なサービスですね。最初はプレイリストの共有から始まりますが、楽曲に出会った後のユーザーの行動もサポートしていきたいです。ユーザーに対してパーソナライズした情報を提供していくイメージです。
Spotifyにも、知名度のあるアーティストのイベントやグッズ販売情報が分かる機能はあります。ですがDIGLEは新しい音楽に出会いたいユーザーが、「これから売れていく人たち」に出会い、そのアーティストのファンになれる仕組みを構築していきたいですね。
先日co-baでイベントも開催されましたね。
西村:はい。今後も定期的にco-baでイベントを開催していこうと思っています。私たちは「DIGLE MAGAZINE」というプレイリスト専門webメディアも運営していて、プレイリストの情報をまとめた記事やアーティストへのインタビュー記事などを公開してきました。
これまでは取材相手と自分たちのクローズな場でインタビューをしていたのですが、それを公開インタビューにして、そのアーティストのライブも楽しめるイベント(DIGLE Live)にしようと考えています。
DIGLE Liveのコンセプトは「仕事終わりに気軽に生の音楽に触れる場を。平日の夜にアーティストのトークセッション&ライブをお酒を片手にゆっくり座りながら楽しめる」こと。
コンセプトが素敵ですね、参加してみたいです!
西村:2018年3月にco-ba libraryを使って初めて開催し、多くの方に楽しんでいただきました。今後も継続的に開催していきたいと思っていますので、よかったら遊びに来てください!
CoffeeMeetingでの出会いがきっかけとなり、共同創業へ。そんなお二人はco-baの入居後に、クライアントワークと自社サービスの開発を並行して進めながらco-baの運営の手伝いまでしてくださいました。投資家からの資金調達を進め、事業を成長させるためにアクセルを踏み出した「DIGLE」。co-baも引き続き応援しています!
===============================================================
※1 「CoffeeMeeting」
co-ba卒業生である株式会社レレレで生まれたプロダクト(現在は株式会社グローバルウェイが運営)。
コーヒー1杯を飲む時間を一緒に過ごしたい人と出会うことができるサービス。
URL:http://coffeemeeting.jp/
[Profile] 西村謙大 / 山田祐真
株式会社CotoLab.西村謙大(にしむら けんた)
株式会社CotoLab.代表取締役
大学卒業後、外資系製薬会社でMR職を経験。退職後、2016年1月に株式会社CotoLab.を創業。
「START ME UP AWARDS 2016」のキュレーター賞受賞。
山田祐真(やまだ ゆうま)
株式会社CotoLab./フロントエンドエンジニア
6年間をアメリカで在学。株式会社g&hで法人営業を経験し、2016年1月に株式会社CotoLab.を創業。2016年3月学習院大学卒業。
HP:https://cotolab.com/
DIGLE:https://digle.tokyo/
DIGLE MAGAZINE:https://mag.digle.tokyo/