クラブのママから起業家へ。波乱万丈な人生から学んだのは「つながり」の大切さ |株式会社CRANE lab 代表取締役 鶴間恵里

  • 2019/04/26

昼はデザイナー、夜はクラブのママ。その後、デザイナーとして独立し、2018年12月に起業しました。たくさんの失敗もしましたが、全ての経験が今につながっています――。

そう笑顔で話してくれたのは、株式会社CRANE lab代表取締役の鶴間恵里さん。波乱万丈の人生だったからこそ「人と人がつながる」ことで生まれる価値を知ったという鶴間さんに、これまでの人生とco-ba shibuyaとの出会いについて伺いました。

それぞれの強みを生かす「フリーランスのチーム化」

――CRANE labがどんな仕事をしてるのか教えてください。

鶴間:Web制作を手がけていて、コーポレートサイトやLP(ランディングページ)制作、アプリのUIデザインなど、Webデザインとシステムに関わる制作全般に携わっています。

ーーWeb制作企業は他にも多くありますが、CRANE labならではの特徴はありますか?

鶴間:社員を雇うという形ではなく、フリーランスを集めたチームを作り、仕事をしています。メンバーにはイラストレーターやカメラマン、エンジニア、デザイナーなど様々なスキルを持った人がいるので、多岐にわたって仕事を引き受けられる強みにつながっています。

ーーめずらしい働き方ですよね。どうしてチーム化を?

鶴間:今、正社員という雇用形態だけではなく、自由に好きな仕事を選べるフリーランスになりたい人が増えていると思います。でも、私がフリーランスを経験して実感したのは、個人でできることは非常に限られているということでした。一人でできるように小さく切り出された仕事を受注するので、仕事の幅も広がりづらいんですよね。

好きなことをやって自由に生きていきたいとフリーランスになっても、現実問題として一人でやっていくのは難しいと悩む方も多くて。すごくもったいないことじゃないですか。私は自由に好きなことをして働くことが、理想の生き方だと思っているので、フリーランスがより安心して活躍できる場をつくりたいと考え、チームをつくることにしたんです。

――チームで仕事をしてみて良かったことはありますか?

鶴間:それぞれが自分の強みを生かして仕事ができることですよね。私は、営業もデザインもコーディングもある程度できるけれど、すべてが「そこそこ」だという自覚がありました。特定のスキルに関して圧倒的な実力を持つ方には勝てないと感じていたんですよね。

一方、特化したスキルを持つフリーランスの中には、それ以外の仕事は苦手という人も多くて。そうなると、大きなプロジェクトにはアサインされづらくなります。でも、チームにすることで個々の強みを生かし、より価値のある仕事ができるようになったと感じますね。

ーー鶴間さんは、人と人とのつながりをつくる「コネクター」としても活動されていますよね。フリーランスのチーム化も、まさにそのような文脈のような感じがします。

鶴間:そうなんですよ。イベントの開催や講演などを通して、コネクターとしても活動しています。人とつながることで個々の強みが生かされるのはもちろんのこと、個人にとっても好きなことや得意なことを中心とした人生を送れるほうが、満足度の高い人生につながると思っていて。だからこそ、ライフワークとしてコネクターの活動も行っています。

人生を変えたのはいつも「人との出会い」だった

ーーなぜ「人をつなぐ」ことに価値を感じるようになったのでしょうか。

鶴間:自分の人生を振り返ったときに、人との出会いが自分を変えてくれたからです。高校時代に音楽好きが高じて始めたアーティストのスタッフやライブイベントのスタッフといった仕事に熱を入れるようになり、私の人生が変わりましたね。

ーーそのときはどのような仕事を?

鶴間:色んな仕事を経験しました。イベントの進行管理、物販、ヘアメイク、あとはステージ上で黒子としてケーブルをさばいたり、ライブ中にボーカルが投げたマイクスタンドを回収したり(笑)。音が出なくなったアーティストの原因を追求して直したりもしていました。そんな中、ひょんなことからあるアーティストのチラシやCDジャケットのデザインを担当することになったんです。

ーーそれは、どのようなきっかけで?

鶴間:たまたまライブイベントに行った時に、会場の外で配っていたチラシを何気なく受け取りました。でも、見た瞬間に「超ダサい!」と感じたんですよね(笑)

素敵な音楽にもかかわらず良さが伝わらないのはもったいないと思い「無料でいいから、チラシのデザインをやらせてほしい」とチラシを配っていたアーティストに直接頼みこんだんです。

ーーすごい行動力ですね!

鶴間:そこから独学で勉強しながらCDやチラシのデザインを担当するようになりました。実は高校卒業後、本当はデザイン学校に行きたかったにも関わらず事情があって行けず、まったく関係ない学校に進学したんです。そういった経緯があったので、デザインを任されたことはとても嬉しかったですし、経験の無い私にデザインをやらせてくれたそのアーティストには今でも感謝しています。そして、そのアーティストと一緒に成長していく中で、徐々に他のアーティストからも仕事を頼まれるようになっていったんです。

ただ、デザインはほぼ無料で請け負っていたので、生活費が足りず……。埋め合わせようと夜の世界に足を踏み入れ、水商売を始めました。

ーー水商売……! どうして夜の世界だったのでしょうか?

鶴間:知人に紹介されて気軽な気持ちで始めたんです。でも、やりはじめたらハマってしまって。アーティストの拠点となっていた山梨で働いて、気づいたら23歳でクラブのママになっていました。途中からは六本木に出て本格的に夜の世界で仕事を始めました。

▲六本木時代の鶴間さん

ーー夜の世界で仕事を始めてから、なぜ今のような形に?

鶴間:しばらく昼はデザイン、夜は水商売という生活を続けていました。でも、20代が終わる頃に「私はどちらの世界で生きていくべきなんだろう」と悩むようになったんです。そこで、当時クラブでひいきにしてくれていたお客様に相談をしました。その方は世界的に有名なファションブランドのアートディレクションをしているデザイナーの方だったんですね。

ーーその方は何と答えたんですか?

鶴間:「迷うことはない。絶対に君はデザイナーになりなさい」って。そして、デザインの勉強の仕方を1から10まで丁寧に教えてくれました。そこで覚悟を決めて、アドバイスをしてくださったお客様が卒業した学校に入学して、基礎を学び直したうえでフリーのデザイナーに絞って働くようになりました。

ーーまさに波乱万丈の人生ですね。

鶴間:はい(笑)。1枚のチラシがきっかけであるアーティストに出会い、デザインを始めました。そして、クラブで出会ったお客様がデザインを学び直すという決断を後押ししてくれました。人生を振り返るといつも転機になったのは人との出会いだったと感じています。

コネクターを名乗っているのは、人との出会いが人生を変えると信じているから。色々な人に助けられてきたからこそ、今度は自分が出会いを提供する側になりたいと思っています。

人はみんな不完全。だからこそ補い合い、つながる場所が必要

ーーco-ba shibuyaに入居されたのは2年くらい前、まだフリーランスのころでしたよね。

鶴間:2017年6月でしたね。家で仕事をしていると、近くにご飯があって、ベットがあって、テレビもあって。そんなところで仕事ができるのは、鉄の意志を持っている人だけだと思っていて。私は意思が弱いので、家にいたらご飯食べながら寝転んでゲームをしてしまうのは分かりきっていました(笑)。だから外で仕事ができる場所を探していたんです。

ーー他にもコーワキングスペースがあった中で、なぜここに決めたのでしょうか?

鶴間:まず条件にしていたのは「24時間営業である」ことでした。クリエイターはそうかもしれませんが、常に一定のペースで仕事ができるわけじゃないんですよね。だからこそ、調子が良いときにオフィスが閉まって、作業が中断されることを避けたかったんです。

検索をすると偶然ここを見つけ、気軽な気持ちで見学してみて。すると、自分がやりたいと思ったことに夢中で取り組んでいるフリーランスや起業家の方がたくさん集まっていました。私の理想とする生き方を体現している人が多くいることに魅力を感じましたね。

ーー実際に入居されてからの印象はどうでしたか?

鶴間:困っているときに相談ができる人がいる安心感があると感じます。co-ba shibuyaに集まっている方々は本当に優しくて。自分が困っているときには誰かに手を差し伸べてもらえますし、会員同士で相談しやすい関係が築けています。ここにいると、一人じゃないって思えるんです。あとは会員の方が開発するアプリのUIデザインに携わらせてもらったり、他の会員さんやco-ba shibuyaと共催でイベントを開催したこともありましたね。

――ありがとうございます。最後に、これからチャレンジしたいことを教えてください。

鶴間:今はWeb制作がメインですが、人と人がリアルにつながれるコミュニティスペースのような場を作ってみたいですね。2018年12月に法人化をしたのは、自社サービスを作る基盤を整えたいと考えたからでもありました。こうした取り組みにより、自分の「強み」や「好き」を生かして、自分の人生を楽しめる人を増やしていけたらと思っています。

 

人とつながることで新たな挑戦や価値を生み出すというco-ba shibuyaも大切にしている価値観を体現している鶴間さん。これからも様々な場でのつながりを力に変えてほしいです!


[Profile] 鶴間恵里

株式会社CRANE lab 代表取締役

1982年、静岡県富士宮市生まれ。桑沢デザイン研究所卒。

学生時代から音楽業界に裏方として携わり、数多くのアーティストのアートディレクションを担当。アートワークを手掛けたアーティストは100を超える。
現在はWEB制作をメインに各分野でプロフェッショナルを集めたCRANE labというチームを牽引し、2018年に法人化。
その他個人ではイベント主催、セミナー登壇等幅広く活動。人を繋げて新たな価値を生むコネクターとして、フリーランスの人脈形成や働き方の提案等、肩書きに捕らわれない生き方を模索している。

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