地方で自分の生き方を見つける |株式会社FoundingBase 共同代表取締役 佐々木喬志 |広報局/Seeker 福井健

  • 2014/06/11

今回は、FoundingBaseの共同代表の佐々木さん(右)と、福井さん(左)にお話を伺いました。
FoundingBaseは学生と社会人をキーマンとして地方に派遣し、街の人と一緒にまちづくりをする仕組みをつくっており、現在は島根県津和野町、岡山県和気町、同県吉備中央町の3つの自治体で活動しています。

【FoundingBaseとは】

FoundingBaseは、都会の若者である大学生・大学院生(キーマン)が地方自治体の「首長付」というポジションに就任し、町民と一緒になって町づくりを行うプログラム。
キーマンは社会人メンバーと共に活動を展開する。その活動は様々な分野の専門家(ベースマン)が専門性を持ってサポートし、またFoundingBase事務局がキーマンや町民と話し合いながら活動全体をプロデュースして活動を支えていく。

http://foundingbase.jp/
https://www.facebook.com/foundingbase


(FoundingBaseの仕組み)

まちづくり、ひとづくり、人材の流動性を高める

──FoundingBaseとしてされているお仕事をお聞かせください。

福:まちに住んでいる人たちが主体的にまちに関わる仕組みをつくる、っていうことをやろうとしています。

佐:分かりやすく言うと「まちづくり」、「ひとづくり」、「人材の流動性を高める」ということをやっています。都市にいる人(主に学生)が地方に行くっていう仕組みを作ったり、そのプロセスの中で人ができることを増やしながら、やりたいことを実現できる状況まで持っていくっていう育成の仕組みもつくっていて、同時に共同代表の林賢司が中に入って、そのプロジェクトを質の高いものに仕上げるってことをやっています。

──現在は津和野と和気で活動中だそうですね。今年で津和野は何年目ですか?

佐:3年目ですね。

──津和野はこの3年でどんな変化があったんでしょうか?

佐:ポジティブになったんじゃないかと思ってます。昔だったら大多数の人が「めんどくさくてやらない」って言ってたんだけど、今は「一緒にやろう」っていう人が増えてきていますね。

FoundingBaseメンバーと一緒に活動していた人が、メンバーがつくったプロジェクトを回し始めたりとか、街の人がもっと関わってきたりしています。3年目に入ってからけっこうそれが加速していて、街の人がそのプロジェクトのプレーヤーになりつつあるという感じです。


(メンバーが立ち上げた「まるごと津和野マルシェ」は定例化し、町民からも好評。)

──なるほど。地域を巻き込むだけじゃなくて、その地域が自主性を持って活動していけるようになっているのは素敵ですね。

新しいことに本気で挑戦して失敗できる場

──ではお二人の経歴を聞いていきたいと思います。
佐々木さんはなぜFoundingBase を立ち上げることになったんですか?

佐:もともとリクルートで人材の仕事をしていました。そのあと先輩と一緒に会社をつくって、その後共同代表の林賢司に出会ってこのプロジェクトをはじめました。

リクルートで働いていたとき、企業が求めている人と実際にいる学生のギャップを感じていました。企業側が求めている人材っていうのは、新しいことをやって結果を残せる人。でもそういう新しいことに挑戦できる人ってなにかを今までやったことある人だから限られているんですね。

それで新しいことに本気で挑戦して失敗できるような場をつくりたいなって思ったんです。そんなときに、たまたま賢司と出会いました。彼はそのとき、地方は若くて優秀な人が欲しがっているんだけど役場には高卒の人しか入ってこない、と言っていて、だったら東京にいる学生をマッチングできるんじゃないかってことで、FoundingBaseの前身であるInnovation for Japanをふたりで立ち上げることになりました。

──地域活性には以前から興味があったんですか?

佐:震災後に自分の地元(宮城県石巻市)のためになにかやりたいと思って、家をなくした友だちにふとんとかを持って行った経験があって、そのときに一番印象的だったのは町がなくなってもそこに居続ける人がいるんだってこと。

今後を考えると地域って淘汰される存在だけど、「子どもが帰ってこれる場所をつくりたい」っていう意思を持っている地域があるんだったら、地域活性のようなプログラムをつくりたいなっていうのは思っていました。

──なるほど。もともと地域に対する意識はあったんですね。

佐:そうですね。高校のときの三年間で地元の商店街の半分くらいがなくなったんですよね。イオンができたりで、下校途中にたこ焼きを出してくれた店とか、通い詰めてたカラオケボックスもなくなっちゃいました。環境が変化することで、お店を立ち上げている人の想いの根をつむみたいなことがすごい嫌でした。

──それでいわゆる地域活性と人材育成といったことがマッチングしたわけですね。


(地方農業の説明会にて津和野ブースで話をしていたFoundingBaseメンバーたち。)

 

──では福井さんがFoundingBaseに関わるようになったキッカケをお聞かせください。

福:キッカケは、大学に行ってるときになにかで学生インターンの募集を見たことです。その当時は、津和野も知らなかったし、地域活性についても考えたことすらなかったけど、「自分がどうするのか」が問われる環境だなっていう感じがすごく響きました。その当時、自分が求めていたものに近いと思ったから、絶対参加しようと思いました。それと、代表の2人がいいなって思ったのが参加しようと思ったもうひとつの理由です。

──直感的に決めたんですね。それでどうやってFoundingBaseに就職ということになったんですか?

福:はじめは1年行って大学に戻る予定だったんだけど、向こうにいる間に地元の人と仲良くなったりとか、自分がやろうとしてることが1年で終わらなかったり、っていうことがあって結局2年いることになりました。

それで、その2年間で高校時代とか大学の友だちを誘ってFoundingBaseに巻き込むってことがよくありました。自分を表す要素の中にFoundingBaseが占める割合が大きくなってきてたから、この状態で大学に帰っても楽しくやっていけなそうって思って、大学を辞めてFoundingBaseに入りました。

──津和野での2年間を通してどういった学びがありましたか?

福:「合理的に考えて当たり前にこうでしょ」っていうのが通じない社会があるんだなっていうことを実感しました。僕は向こうで教育というフィールドで取り組んでいたんだけど、僕がいいアイディアを出しても、「お前、教育の専門家じゃないだろ」って言われたり、自分が大学生だったという理由で、やりたいことに取り組むことすらもできないことがありました。

──シビアだけどそれが地域の現状なんですね。自分の価値観の変化とかはありましたか?

福:街が小さい故に、自分のやっていることで誰かがリアルに喜んでくれるっていうのが見えました。誰のために汗水流して、誰にありがとうって言ってもらえるか分かる距離感で仕事ができたから、それはモチベーションにもつながったし、本物だと感じました。


(津和野町の子どもたちと街探索をする福井さん。)

──それはやりがいがありそうですね。二人は今は東京でなにをされているんですか?

福:僕は、記事を書いたり、Facebookの更新をしたりとか、広報といった部分ですかね。他には地方に行きたい学生を探したり、仲間集めです。

佐:東京の人とつながりに行くことと、和気町の取り組みを一緒につくることです。月1で岡山に行っています。それから、FoundingBaseがこれからどういう事業をやっていくのかを考えるってところです。

──なんで佐々木さんは直接、津和野に入ったり、和気に入ったりしないんですか?

佐:学生の開拓だったり彼らの背中押すことと、FoundingBaseに共感してくれて協力してくれる仲間を集めるにはやっぱり東京がいいです。あとは、東京で活躍している人たちが、今なにを考えているのかってことに自分たちの取り組みを並べて客観的に考えなきゃいけないと思っています。そういう視点がないとFoundingBaseってただの地域良くする団体になっちゃうと思うので。今は二拠点居住的な感じになってますね。

──いわゆるノマドってやつですね。かっこいいですね。津和野や和気で任期を終えた人たちになにか望むことはありますか?

佐:自分の生き方を見つけてほしいです。

俺は大企業にいくことが善でベンチャーに行くことが悪っていうような考え方には興味なくて、なにをしていても自信を持って「こういう選択をしたんです」っていうように語れる状態になってることが一番だとって思っています。


(プレゼンをする津和野町長付の井上寛太さん。ROLE PLAYING TSUWANOというプロジェクトを進行中。)

新しい民主主義をつくる

──FoudingBase の今後の方向性を教えてください。

佐:新しい民主主義をつくることです。

──どんな民主主義なんでしょう?

福:自分たちで周りにある問題を見つけ、行動を起こして解決していく、っていう動きによってよりよい街にしていくことが、ここでいう新しい民主主義です。しっかり自分の身の回りのことに目を向けて、それに対して行動していく人を増やす、ってことです。

佐:社会は誰のものでもなくて一人一人のものなんだってところを伝えていきたいです。

地方の小さな街でさえ、そこに社会があるわけで、その小さな社会の総称が社会でもあるわけじゃないですか。その小さな社会を自分たちで作れるっていう状態になったとしたら、もうちょっとみんな考えるし、頑張れると思うんです。

それが今はないから、やろうと思っていても、仲間もいないからつぶされます。だけど「私もやる」ていう人たちが増えてきている状態が津和野では今できてきていると思っています。

俺らの特徴って、二言目には「一緒にやりましょうよ」って言うことだと思っていて、それが楽しいし、大事にしたい価値観です。結果として町づくりとか、人材育成ってことになっているけど、結局はやってるときが楽しくて、そこで仲間が増えるのも楽しいからっていうような状態が津和野でつくれています。

つまり、新しい民主主義をつくりたいわけじゃなくて、それはできるものだと思っています。結果論なんですよね。つくろう、っていうことです。

──新しい民主主義はできるもの、なんですね。
津和野が社会のロールモデルとなってイノベーションを起こしていくのが楽しみですね。

(2014年夏に岡山県和気町で行われたFoundingBase合宿にて。)

──ではco-baとFoundingBaseの関わりについて教えてください。

佐:今年の3月に入ってきました。ちょうど会社を登記した次の日ですかね。それから河村さんと彼の間伐の仕組みを津和野で入れられたらいいねってことで、津和野に来てもらったりしてます。

福:シゴトカイギにまーさん(tsukuruba代表中村真広)出てもらったりしました。あとは津和野ごはんというイベントもここの場を借りてやりました。佐々木さんと二人なのでここで働いていなかったら引きこもりみたいになってしまうので楽しんでいます!

──今後のFoundingBaseの活躍がとても楽しみです!

佐:ありがとう。社員やインターン生、地方に行きたい学生、社会人募集中!チャレンジャー募集中です(笑)

──だそうです!ありがとうございました。


[Profile] 佐々木喬志

株式会社FoundingBase 共同代表取締役

1984年宮城生まれ。大学在学時より、2社のベンチャー企業にてインターンコーディネート事業などに参画。その後リクルートHRM、リクルートを経て、国籍、年齢、性別等、変えることの出来ない事実により活躍機会を失っている人のサービスを立ち上げるため、GLナビゲーション株式会社を25歳の時に代表と創業。2013年、『FoundingBase』を林と立ち上げる。


[Profile] 福井健

広報局/Seeker

1990年大阪生まれ。大学在学時にFoundingBaseにキーマンとして参加し、島根県津和野町に2年間滞在。同町にある県立高校の魅力化に関する事業を中心に、官民共同のプロジェクトなどを立ち上げる。2014年、津和野町での任期を満了し、株式会社FoundingBaseに入社。