コミュニケーションを通して、楽しいことを創造する |株式会社トリクミ 代表取締役/クリエィティブディレクター 古田琢也

  • 2014/07/18

「デザイナーで有名になる」という夢を追いかけて21歳で上京。
現在はツクルバの外部スタッフとしてアートディレクターを勤め、地元鳥取を盛り上げるべく仲間たちと立ち上げた「トリクミ」にて活動中の古田さんにお話を伺いました。

グラフィティとの出会いからデザイナーの道へ

──今されているお仕事についてお聞かせください。

アートディレクター/グラフィックデザイナーとして活動しながら、地元鳥取を盛り上げる団体「トリクミ」という活動をしています。現地で地産地消のカフェを出したり、農家さんと商品開発をしたり、地域と一緒になって面白いことを仕掛ける動きをしています。

──学生の頃からデザイナーになりたかったんですか?

そうですね。鳥取にいた頃は、僕はすごくヒップホップが好きで、グラフィティ(※スプレーやフェルトペンなどで描くアート)をやっていたんですよ。絵が昔から得意だったっていうこともあって、自分たちでイベントをやる際に、フライヤーを見よう見まねで作っていました。そのときにそういう仕事があるっていうことを初めて知って、デザイナーになろうと決めたんです。

──デザインの専門学校を卒業して、東京で就職されたんですか?

大阪にある専門に3年間通っていました。卒業した後、21歳の時に東京に出てきて、3年間百貨店などの仕事をやっていたのですが、このままじゃだめだって悶々としていたんです。その後、尊敬していた米村浩さん(noproblem.LLC)というクリエイティブディレクターのところに弟子入りみたいな形で入ったんですが、その2年半の間でデザイン観などを含めてすべてが変わりました。

──どんな2年半だったんでしょうか?

とにかく必死に働きました。寝る間も遊ぶ間もなかったです(笑)。かなり濃厚な2年間でした。それまではだいぶ自信もついてきていて、デザイン結構できるんじないかって天狗になりつつあったんですが、”デザイナーをやめようかな”って真剣に考えたくらいこてんぱんにされました。

それと、大きな案件をいただくようになってから、”誰のためにデザインしているんだろう”っていう疑問を抱くようになりました。だからこそクライアントと直でやりたいっていう想いもあったし、トリクミを始めるということもあって、noproblemを出てフリーになることに決めました。

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──その後は、フリーランスでデザイナーをされているということですか?

そうです。他にもブランディングや、企業のステートメントをつくること、コンセプトメイキングのようなところもやっています。デザインの上流の部分の、なんでそのデザインが必要なのかというところを考えたりします。

鳥取のプロジェクトもそうなんですが、戦略を考えるっていうところが一番重要で、そこができればアウトプットがデザインだろうが、カフェだろうが、なんでもいいんです。僕としてはそこが一番面白いし、一番大変ですね。

昔遊んでいた感覚で楽しいことを作っていきたい

──古田さんのお仕事はデザインとトリクミの二軸なんですね。トリクミを始めるキッカケはなんだったんですか?

社会人3年目の夏休みに鳥取に戻ったときに、一緒に専門学校に行って夢を追いかけていた仲間が「お前頑張っとるな」って言ってくれたんですね。彼に近況を聞いてみたら「いやあ俺は今すげえつまんねえわ」って言ったんです。僕はそれがすごくむなしかった。どんな職業をしていても「これ超楽しいんだよね」って言ってほしかったんです。それでそいつに「東京だからそうやって楽しめるんでしょ」って言われてすごい距離感を感じました。

そのときに思ったのは、僕は運が良くて自分のやりたい仕事ができているっていう部分もあるけど、それ以上に自分が楽しもうと思っているから楽しめてるんじゃないかってことですね。

昔からデザイナーで有名になりたいって言っていたんですが、「なんで有名になりたいんだっけ」っていつも自問自答をしていました。それであるとき、自分が頑張っている姿を鳥取にいる仲間に見せるために東京に出てやっているのかなって思ったんです。

そこから、彼らのためっていうのも変だけど、彼らと昔遊んでいた感覚で楽しいことを作っていきたいと思い始めました。そんな流れで2年ほど前に「トリクミ」を始めるにいたりました。


*トリクミのメンバーと。

地域に根付いたことをやっていきたい

──2年間活動されてきて、最初に持っていたビジョンが変わってきたということはありますか?

最初は鳥取を盛り上げたいとか、鳥取を元気にしたいという想いからスタートしていて、それは今も変わらないんですけど、活動をしているうちに、”地域活性化”っていう言葉に矛盾を感じたんです。地域を元気にしようよって言っているのは東京にいる人たちなんですよね、僕も含めて。

実際に見てみると地域の人たちは地域の人たちで意識も高いし、十分楽しんでいたりするんですよ。なのに勝手に部外者が”活性化”って言っていて、結局楽しんでいるのは自分たちじゃんって思い始めてから”地域活性化”といった言葉は使わなくなりました。

最初の頃は、東京で鳥取の食のイベントなどをやっていたんですが、もっと地域に根付いたことをやりたいと最近は思っています。今やっているカフェでは、同世代の農家さんから野菜を仕入れて、僕らが料理して、お客さんに食べてもらっていたり、実際そこに住んでいる人たちとどう関わっていくか、彼らがどう主役になるかということに主軸をおいてます。

──カフェは鳥取でやられているんですか?

鳥取の隼(はやぶさ)地域っていう人口が750人くらいの町にあります。一階の半分がカフェで、その横の直売所で野菜やおばちゃんがつくったおもちなどを売っています。二階は自由に使ってよくて、コミュニティースペースみたいな感じですかね。

始まりは、地域の農家さんからコミュニティースペースをやらないかって話がきて、プロデュースっていう立ち位置で入りました。そうしたらトリクミのメンバーの二人が「仕事を辞めてカフェを本業にする」って言い出して、人の人生を変えてしまったってすごく驚いたのとプレッシャーを感じました(笑)。


*トリクミが運営するカフェ「HOME8823

──地域活性って一種の流行りみたいになっていて、なにをもって活性化したとするのか、それぞれの価値観があると思うんですが、トリクミではどこに重点をおいているんですか?

一つは地域の人たちが主役になって、それぞれが役割を持つということです。もう一つ僕が大事にしていて、カフェでやろうとしていることは、小さくてもいいので昔からあるコミュニティーや、経済の輪を復活させることです。

たとえば町の人一人一人が、知り合いがあれを売っているからそこで買おう、といったところから経済の輪をもう一回つくるっていうことをしていきたいと思っています。それが何個もできたら面白いなって考えています。

──トリクミは今後はどういう方向性で活動していくのでしょうか?

僕は最近、プレーヤーを増やしたいっていう想いがあります。カフェの件にしても全体のプロデュースは自分がやっているけど、お店を実際に回していくのは実際にそこにいる人たちなんです。だから彼らからどんどんいろなことをやっていってほしいという想いがあります。

前に農家さんが「いろいろやりたいんだけど、一人だとやりたいっていう気持ちが続かない」って僕に話してくれて、まさにそうだなって思ったんです。だから僕たちがコミュニティースペースをつくることで、そこにいろんな人が集まってこういうことをしようっていうような動きが向こうから出てくる切磋琢磨できる環境にしたいんです。さらに言えば、自分たちみたいな行政とも地域とも縁がある第三者のような人たちの存在がその場をかき乱すようなことも重要だと思っています。

──まさに「場をつくる」って感じなんですね。

そうですね。そういった環境準備ってそういうのを見てないとできないことだと思うんです。だから自分が東京にいてco-baのようなコミュニティースペースだったりで吸収したものをどう還元できるかっていうのは、自分にしかできないことなんじゃないかなと思っています。

東京と鳥取との二拠点生活を

ーーかっこいいですね。co-baに入ったのはツクルバとの仕事がキッカケとお伺いしたのですが、ツクルバとの出会いを教えてください。

ツクルバとの出会いは、マー君(ツクルバ代表取締役中村真広さん)がキッカケです。マー君と三年くらい前に、共通の知人の個展に行ったときに知り合いました。そこから三年くらい音沙汰がなかったのですが、僕がフリーになるくらいのときに、1Kでやっていたイベントで再会しました。そこで彼に「僕フリーになるんです」って言ったら、「いい仕事あるよ!仕事やんない?」って言われたんです、いきなり(笑)。マー君のこのノリも凄いっすよね(笑)。

ーーそれで一緒に仕事を始めたんですか?

そうです。FLAGの仕事をいただきました。そこからツクルバの外部スタッフという立場で一緒にやっていて、アートディレクターとしてやっています。


*神宮前にあるシェアオフィスFLAG

ーーco-baに入られたのはいつくらいなんですか?

独立した後なので一年前の4月です。僕の場合は特殊で、業務提携しているし近くで仕事できたほうが早いってことで入っています。

ーーco-baのコミュニティーのどんなところが好きですか?

やっぱりいろんな人がいるってところですね。たとえばツクルバのウェブの件だと、僕がデザインして、コーディングを木村さん(co-ba会員・SUECCO代表 )にやってもらうっていうチームプレイみたいなことをしたり、違うジャンルの人と仕事ができるのはすごい面白いし、刺激になりますよね。

ーー今後の展望をお聞かせください。

鳥取と東京を半々くらいに二拠点にしていこうと思っています。来年にむけて鳥取で新プロジェクトを計画しているので、それを走らせるために二拠点を行き来するカタチでやりたいと思っています。

ーー新プロジェクトについて教えてください!

それは秘密です(笑)。簡単にいうと、若いやつらが集まって面白いことをしかけれる場所をつくろうとしています。プレーヤーを増やすことにもつながっていけたらと思っています。

ーー古田さんの今後の活躍が楽しみです!ありがとうございました!

今度「U29 人生デザイン」という番組に出るので、ぜひそちらもご覧ください!
「U29 人生デザイン」 
NHK Eテレ 7/20日 月曜日 夜7時25分  再放送 翌週 夜11時25分


[Profile] 古田琢也

株式会社トリクミ 代表取締役/クリエィティブディレクター

1987年1月 鳥取県生まれ 東京都三軒茶屋在住。広告制作会社に3年勤めた後、アートディレクター 米村 浩(noproblem.LLC)に師事。2013年より独立しフリーランスとして活動。同年、アートディレクターとしてツクルバとパートナーシップを結び、シェアオフィス「FLAG」や北九州「fabbit」などのLOGOやサイン計画などを手がける。アートディレクター/グラフィックデザイナーとして、ブランディングや販売戦略を軸に、CI・VI・マス広告・WEBなど様々なクリエイティブを実践。また、地元鳥取を盛り上げる団体「トリクミ」を結成し、地域活性化プロジェクトや地域に根ざしたデザインなども積極的におこなう。2014年 鳥取に地産地消カフェ「HOME8823」をOPENさせる。