ずっと夢中でいるための選択が「起業」だった――順調だった大手IT企業勤めから、踏み出した一歩 |株式会社GOLDEN DOG 諸澤 和哉

  • 2018/07/23

「GOLDEN DOGのアプリが楽しみ」と言われるようになりたい――。すき間時間に遊べるライトなゲームアプリを開発する、株式会社GOLDEN DOG代表の諸澤和哉さんは、こう語ります。

諸澤さんはサイバーエージェントに新卒で入社し、サイバーエージェントグループ最優秀新人賞の受賞やコミュニティ事業本部のプロダクト責任者を務め、2016年4月に独立。

GOLDEN DOGを創業し、co-ba shibuyaへ入居しました。今回は諸澤さんに、起業の経緯やいま取り組んでいる事業、そしてco-baの活用方法について伺いました。

エンジニアから事業づくりまで。静かな野心を胸にサイバーエージェントへ

エンジニアという仕事を意識したのは、いつ頃からですか?

諸澤さん(以下、諸澤):プログラミングが、純粋に楽しいと思っていたんですね。大学院生の頃に人工知能を活用した知的教育システムの研究をしていて。細かく目標を設定し、達成することが好きだったんです。小さな成功体験を積み重ねられることが嬉しくて、自分はエンジニアに向いているんだろうなと思っていました。

数ある選択肢から、なぜサイバーエージェントへ?

諸澤:エンジニア一本ではなく、いずれは企画や事業作りまで携わりたいと考えたことが理由でした。サイバーエージェントの社員と会い、組織のカルチャーを理解していく中で、「楽しく働けそう」と感じたのが決め手でした。直感の部分もあるかもしれませんね(笑)。

入社した後は、どのような事業に携わりましたか?

諸澤:入社してすぐのタイミングで、社内のビジネスコンテストがありました。各自が事業案を持ち寄り、有望なものが事業化される制度です。私が応募した企画は大喜利アプリでした。
その企画が賞を取り、新卒メンバー3人で開発することになったんです。これまでにも大喜利のサービスはいくつかあったのですが、その時点でまだスマホアプリ化されたものがなかったというのが大きなポイントだったと思います。また、プレーヤーが大喜利して入賞すると、ユーザーのランキングが上がっていくという新しさも評価されましたね。

いきなり新規事業なんですね!

諸澤:新卒だけで取り組む新規事業ならば失敗しても痛手はないですし、私たちを鍛える意味でも任せてくれたのだと捉えています。3ヶ月の開発期間で、何とかリリースまでたどり着きました。事業に取り組む中で、社内の「コミュニティアプリ」ジャンルの中では、PV数が1位になるほどの規模に成長していったんです。
その成果が評価され、コミュニティアプリを扱う事業本部のプロダクト責任者に。バイラルメディアの事業に関わった後に退社して、GOLDEN DOGを創業しました。

仕事と交流のメリハリがつけやすいのが魅力だった

会社員としての生活も順調だったように思えるのですが、なぜ起業を?

諸澤:「どうすればずっと幸せでいられるか」を考えていたときに、自分にとっての幸せは「何かに夢中になっている瞬間」だと気付いたんです。仕事は、人生のなかでも大きな割合を占めています。その時間を夢中で過ごしたいと考えて、起業することを選びました。会社員時代も仕事に夢中でしたが、より没頭できる環境を選んだわけです。

起業にリスクを感じる人もいるますが、不安や葛藤はありませんでしたか。

諸澤:仕事内容や待遇に不満はなかったんです。その環境から外に出て、会社をつくることに不安はありました。でも、自分がそれまで培ってきたスキルと今後挑戦したい事業を考えた時に、「成功できるのではないか」と思ったんです。貯金もある程度ありましたし、失敗してもまた就職すれば良いくらいに考えていました。

どのような事業での挑戦を考えていたのでしょうか?

諸澤:今と同じくライトなゲームアプリですね。サイバーエージェントの時に、この分野の収益性の高さを実感していたんです。2~3人で、2カ月で開発できるにも関わらず、売上が数千万円を超えているケースもありました。少人数で勝負ができ、コミュニティアプリの開発経験も活かせますから、勝算があるかもと。

創業時からco-ba shibuyaにご入居いただいていますが、入居の決め手は?

諸澤:仕事場を探し始めたときに、シェアオフィスやコワーキングスペースを5か所くらい見て回りました。その中でも、一番落ち着ける雰囲気を感じたのがco-ba shibuyaでした。
他のコワーキングスペースでは、「週に1回はお互いのサービスの進捗を共有する」というように、横のつながりを”強制的に”作ろうとしているケースもあって、そこは合わないなと感じていたんです。co-ba shibuyaは、関わり方の自由度が高かったんです。
アプリの開発は、たしかに家でもできます。でも、ずっと1人でいるとさすがに気持ちが病んでしまいそうで……(笑)。co-ba sibuyaに来れば気分転換にもなり、作業にも集中できます。家以外にも働く環境が選択できるのは、精神衛生上、とても良いと感じています。

入居者の方との交流はありますか?

諸澤:一人で黙々と作業をしたいときは集中できますし、アプリのタイトルについてヒアリングをしたいときは気軽に会員の方に聞けるので、メリハリがつけやすいと感じていますね。

長期的には、コミュニティサービスの開発も

これまでに複数のライトゲームアプリをリリースしていますが、反響はいかがでしたか?

諸澤:初めてリリースした「ボクの妹が死んだ。」は、公開2週間で10万ダウンロードを達成して、(2018年7月)現在は80万ダウンロードを超えているなど、ユーザー数が順調に増えています。アプリストアのコメント欄やソーシャル上での反応を見ていると、かわいいイラストを随所に差し込むなど、工夫した点が評価されたのは嬉しいですね。

その成功要因は、どんなところにあるのでしょうか?

諸澤:サイバーエージェントのときにつかんだ、自分なりの方程式があるんです。SEO(検索最適化)のアプリ版である「ASO(アプリストア最適化)」や、継続率や滞在時間を増やすための施策を行うことで、より多くの人にアプリを知ってもらえるよう取り組んでいます。
たとえば、少ない時間の中でユーザーに関心を持ってもらうよう、アプリストアに掲載できる数枚の写真や説明文に気を配ったり、結末が気になるタイトルやストーリー構成にするといったように、必ず埋めなければいけないポイントを複数用意しています。それを全て満たすことで、成功率を高めることができていると思います。

2018年6月にも、「妹の部屋から脱出」というアプリをリリースしていましたよね。

諸澤:はい。これまでは「なぞなぞ」をテーマにすることが多かったのですが、今回のアプリではすき間時間に遊べるのに本格的な推理を楽しめます。特にエンディングにはこだわったので、ぜひco-ba shibuyaのみんなにも遊んでみてほしいです。

会社として、長期的に実現したいことはありますか?

諸澤:GOLDEN DOGから出るアプリが楽しみ」と言われたいです。アプリを継続的に出すことで、会社にファンがつくと嬉しいなと。ライトゲーム以外にも、腰を据えて開発するサービスにも挑戦したいです。今はVTuberに関連したコミュニティサービスを考えています。

最後にco-ba shibuyaの活用方法について、要望などがあれば教えてください!

諸澤:co-ba shibuyaの居心地の良さには、本当に満足しています。強いて挙げるとするならば、エレベーターがもう少し早くなると良いな、と思っていますね(笑)。

サイバーエージェントで実績を出しながらも、自分の人生を見つめ、起業家としての道を歩き始めた諸澤さん。co-ba shibuyaでは、イベントの開催や入居者同士の交流会を通じて、諸澤さんのように挑戦する起業家やクリエイターの方々を今後も応援していきます!


[Profile] 諸澤 和哉

株式会社GOLDEN DOG

1987年生まれ、神奈川県出身。上智大学卒業後、2012年に新卒でサイバーエージェントに入社し、主にアプリ事業に携わる。事業部長等を経験したのち、2016年に株式会社GOLDEN DOGを設立。カジュアルゲームアプリの企画・開発をメインに活動中。兼任で株式会社Libfareの最高技術責任者も務める。
HP: http://goldendog.co.jp/