常識にとらわれない「おもしろさ」を形に。世の中に新しい選択肢を生み出すクリエイティブディレクターの挑戦 |株式会社既読 CEO 長谷川 春 (HAL)

  • 2020/02/17

「おもしろいデザインですね!」「こんな発想はなかった!」

そんな言葉を聞くのが何より楽しいと話すのは、株式会社既読 代表取締役の長谷川春さんです。
長谷川さんは、広告代理店でブランディングやクリエイティブ設計を担うアートディレクターを務めたのち、2019年7月に既読を設立。広告代理店で培ったプランニング力を活かしつつ、既存の枠組みにとらわれないクリエイティブ制作を行なっています。
誰も見たことがない、アッと驚くようなクリエイティブを世の中に生み出したい。そう語る長谷川さんが起業した理由や、co-ba shibuyaとの出会いについて伺いました。

〜〜〜コミュニティマネージャーより〜〜〜
「面白いことを仕立てるのが大好きな、少年のようなワクワクを持った人」。
彼を一言で表すと、そんなイメージです。
長谷川さんのアイディアや言葉の一つひとつには、いつも人をワクワクさせる不思議な魂が宿っているな、と会うたび思います。
とても魅力に溢れた方なので、インタビューを通して、あなたもぜひとも楽しんで既読の世界観に巻き込まれていってください。

既読が目指すクリエイティブは「◯」ではなく「△」!?

——絶対に伺おうと思っていたのですが、なぜ社名を「既読」にしたのですか?もう気になって気になって……。

僕はすごく社名が気に入っているんですよ。

社名を仲間と考えた時に、聞いた人たちが思わず「どういう意味?」と聞き返したくなるものにしようと……(笑)。

——あ……。まんまと思惑にはまってしまいました(笑)。

そうやって「なんで既読っていう社名なの?」って聞いてほしいんですよね。「なんで?」と疑問に思うと、自然に興味を持ってくれますからね。

もちろん深い意味も込められていて。クリエイティブ制作って、小手先の技術を使えばオシャレでかっこいいものができてしまう。でも、ビジュアルだけにこだわるのではなく、「今はどんな時代で何が求められているか」を先読みする。そして、誰も見たことがない、アッと驚く、本来の創造するという意味でのクリエイティブでありたいと思っているんですよね。

——「未来を既に読んでいる」から「既読」なんですね!

まぁ、僕の性格上、連絡を既読スルーしがちなので、見るたびに「既読スルーしないぞ!」と思い出すための社名でもあります(笑)。

——社名に長谷川さんのお茶目さやおもしろさが表れてますね。ミッションである「新しい選を描き続ける」にはどういう意味が込められているんですか?

「新しい選択肢を取り続けたい」という想いが反映されています。

起業する前は、広告代理店でアートディレクターをしていたんです。広告をつくる際には、大勢の人が企画を出しますよね。でも、議論が掛け算にならないとき結局尖ったところのない、万人に受け入れられるような広告になってしまいがちで。

普段生活をしていると、広告に溢れていますよね?広告ってそもそも人の目にとまる必要があるのに、風景になってしまう。それが悲しいんですよね……。

だから、「世の中に受け入れられるかわからないけど、ありきたりではない。誰も見たことがないものを作りたい」って思っちゃったんですよね。

——その思いが起業につながったのでしょうか?

そうですね。次第に「僕が考えるクリエイティブをそのまま世の中に出してみたい」という気持ちが膨らんでいったんです。

起業するきっかけになった「新しい選択肢を社会に届けたい」という初心を忘れないために、ミッションには「線」ではなく「選」という表現を使っています。

——長谷川さんが思う「新しい選択肢」とはどのようなものでしょうか。

僕にとって「新しい選択肢」は「◯」ではなくて、「△」なんですよね。

——というと……?

学校の先生から◯がもらえるようなクリエイティブではなく、「正解かどうかわからないけど、おもしろそう!」と思わず言ってしまうような△なクリエイティブ。それが「新しい選択肢」ですね。

既読っていう社名も一見社名っぽくないし、何やっている会社かわかりづらいじゃないですか。でも「なんで?」ってなる。◯ではなく、△なんですよね。

やっぱり王道の選択よりも、ちょっとした変化球が好きなんですよね。「ちょっとまずいかな……」と思っちゃうくらいのアイデアを形にしてみたいんです(笑)。

co-ba shibuyaは刺激と元気をもらえる「熱量にあふれたカオスな空間」

——入居される前に、co-ba shibuyaのステッカーデザインを担当してくださったのが最初の出会いでしたね。

そうですね。ちょうど社外で「おもしろいことをしたい」と思っていた時期に、知り合い経由でco-ba shibuyaを紹介してもらって。「ステッカーデザインのディレクションをお願いできませんか?」とコミュニティマネージャーから依頼してもらったんです。

——長谷川さん一人ではなく、co-ba shibuyaの入居者の皆さんに集まってもらってデザインを考えたんでしたよね。

そうでしたね。僕一人でデザインして、良し悪しを判断してもらう方法だったら広告代理店での仕事と変わらないな、と。それで、会員の皆さんと一緒に作ろうと考えたんです。

十数人に集まってもらい、「あなたが思うco-ba shibuyaらしさとは?」と聞いていきました。そして、出てきた言葉を4つのキーワードにして、ステッカーデザインに落とし込んでいったのです。

最終的には「Unique」「and TRY」「Our Home」「has Story」の4つのステッカーができあがりました。

——少し気になったのですが、「Our Home」のステッカーデザインはなぜ恐竜なのでしょうか?「Home」という言葉のイメージとは少しかけ離れていているようにも思えて。

co-ba shibuyaに集まる人たちって、想いをもって起業していたり、スキルを磨くためにフリーで活動していたり。自分が掲げる目標に向かって、日々戦っている人が多くて。そこで、戦う生き物の象徴である恐竜をモチーフにしたんです。

戦う恐竜のような人々が集まっていながら、co-ba shibuyaは不思議と落ち着くホームのような場所でもあるんですよね。そんなco-ba shibuyaらしさを表現しようと思ったんです。

——そういう意味だったんですね……!

「なんでなんだろう」って思ってもらえたら、こっちのものです。まさに「△」のデザインにできたな、と(笑)。

co-ba shibuyaの魅力って、この「カオスさ」にこそあると思うんですよね。みな独自の信念や目指したい世界があり、それに基づいて活動している。誰一人として、同じ目標に向かっている人がいない「カオス」な空間なんですよね。

でも、目標に向かう高いエネルギーを持っているのはみんな一緒。だから、不思議と居心地がいいのだと思います。

co-ba shibuyaに身を置くと、自然とアイデアが湧き上がってくる。「僕もここで仕事をしたい」と思うようになり、このステッカーデザインプロジェクトの後に入居を決めました。

——既読のミッションである「新しい選を描き続ける」ためにも、周りから刺激を受けられる環境に身を置くのは重要ですね。

そうですね。最近は、アイデアをもらいたい時だけでなく、つらいと感じた時にも来るんです。やっぱり起業すると、事業が思い通りに進まないこともあるじゃないですか。そんな時にco-ba shibuyaに来ると、みんなから元気をもらえて「明日からも頑張ろう」って思える。僕にとってco-ba shibuyaはアイデアの源でもあり、元気をもらえるホームでもあるんです。

常識にとらわれないクリエイティブを仲間と一緒に

——今後、既読でどのような事業をしていきたいですか?

今後はクライアントワークだけでなく、仲間と一緒に自分たちがおもしろいと思えるプロジェクトを行っていきたいと思っています。

最近関わっているものだと、co-ba kesennumaのオーナーである杉浦さんと行っている「他力本願寺」プロジェクトが、今後やりたいことに近いですね。

——それはどういったプロジェクトですか?

杉浦さんの思想を体現した「他力本願寺」というコミュニティをつくるプロジェクトです。

他力本願寺では、”世の中に大丈夫を蔓延させる”ことを目的に、禅や仏教の教えを土台においた様々な催しを行っています。

例えば、お坊さんをスナックに招いて様々な人の悩み相談に乗る「坊主BAR」を開催したり、お寺で瞑想や坐禅を行いながら自分を見つめ直す合宿を行ったり。僕は、そのコミュニティのサイトデザインを担当しています。

とはいえ、今後どのようなプロジェクトになっていくのかは、実は僕もよくわかってないんですよね(笑)。


——
え、わからないんですか……!?

そうなんです(笑)。プロジェクトの終着点はわからないんですけど、でも関わるなかで杉浦さんの思想を知るのがすごく楽しいんですよね。

杉浦さんはみんなを巻き込む竜巻のような荒々しさがありつつも、繊細な感性を持っている人で。これからは、何かを「売る」ためのクリエイティブではなく、杉浦さんのように常識にとられない発想をする魅力的な人と一緒に、今までにないクリエイティブを世の中に生み出していきたいんですよね。

——終着点は決まっていないけれど、その過程を楽しむ。そんな既読が生み出す型破りなデザインをみるのがとても楽しみです。

ありがとうございます。また、もう一つ挑戦したいのが、社会課題に対して、クリエイティブを用いたアプローチを行なっていくことです。

社会課題って、最初は少しとっつきにくいイメージがあるじゃないですか。でも、インパクトのあるプロダクトやアートワークに落とし込めば、関心を向けてくれる人は多くなると思うんですよね。例えば、環境問題を提起するアート×PR作品を作ったり、資本・情報格差を解消するようなプロダクトを開発したり。そんな風に、既読として、世の中にポジティブな影響を与えられて、かつ人をワクワクさせるようなクリエイティブにも挑戦していきたいですね。

今までにない新しいものが生みだされる瞬間って、「いったいこれから何が起こるんだろう」と気持ちが高鳴るじゃないですか。そんな気持ちをこれからも既読からたくさん世の中に届けていきたいです。


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「正解ばっかり狙っていたら、つまらないからね!」そう楽しそうにお話してくださった長谷川さん。夢を語る際のキラキラした瞳と、いたずら心を感じる笑顔からは、長谷川さんが既読でのプロジェクトを心の底から楽しんでいる様子が伝わってきました。これから既読が生み出す常識破りのクリエイティブデザインを楽しみにしています。

また、現在co-ba shibuyaでは仲間を募集しております!
記事を読んで 長谷川さんに興味を持った方も、ぜひ問い合わせください。ご紹介いたします◎
   
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取材協力:inquire Inc.(取材・執筆:辻野 結衣 、編集:岡本 実希 )


[Profile] 長谷川 春 (HAL)

株式会社既読 CEO

1985年生まれの3兄弟末っ子。
クリエイティブで、人の”幸福度”を膨らませたいと思い、6年半勤めたデジタルエージェンシーを退職し、2019年7月に株式会社既読を設立。

大企業から協会やお寺まで、プロモーションのコミュニケーションデザイン設計を主な業務としながら、自社発信で”クリエイティブを楽しむ”を提供するモノを色々仕込み中。

2人の子供と1人の妻を持ち、家では「子煩悩」なお父さん。

▶︎HP:https://www.kidoku.design/
▶︎note:https://note.com/kidoku0_0
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