事業をスケールさせる火付け役——クライアントと代理店をつなぎ、ビジョンの実現を後押ししたい |株式会社KAEN 代表取締役 川田勇輝

  • 2020/05/28

「まだ見ぬ未来に火を付ける」

これは、今回お話を伺った川田勇輝さんが代表取締役を務める株式会社KAEN(火炎)のミッションです。KAENの現在の事業では、挑戦する起業家の心に宿る「火」を、販売戦略という側面からサポートし「炎」にする支援をしています。

今は起業家のをサポートに情熱を注ぐ川田さんですが、昔は心の底からやりたいと思えることがなかなか見つからなかったと言います。それどころか以前は、「周囲の期待に応え、高い偏差値の大学に入り、大企業に就職すること」だけが人生の正解だと信じ、失敗を繰り返したそう。

そんな川田さんがなぜ起業という道を選び、起業家の「やりたいこと」を応援するようになったのか。また、他の入居者の方とともにco-ba shibuyaでKAENのCI(コーポレート・アイデンティティ)を策定したことが入居につながったという、私たちとの出会いについて話してもらいました。

自分の道を選ぶことができる、納得した選択ができる人を増やしたい

——KAENの事業内容について教えてください。

簡単に言うと、スタートアップと代理店をマッチングし、スタートアップを販売戦略の側面からサポートする事業をおこなっています。

ただマッチングするだけではなく、契約手続きや顧客フォローのフロー整理もおこない、スムーズにパートナーシップを結ぶためのサポート全般をしていますね。

——そもそも川田さんはなぜこの事業を始めようと思ったんですか?

以前勤めていたスタートアップで、代理店販売網を構築しサービスの成長や資金調達をサポートしていた経験から、十分な知見があったんです。また、他のベンチャー企業でも代理店販売に関して困っている人が多く、私が価値提供できる課題はこれだ、と思い、起業するならこの領域だと考えました。

また、前職での仕事を通じて、立ち上げまもないスタートアップは販売網の構築にまで手が回らないケースが多いと気づいたんです。せっかく想いがつまった商品やサービスでも、ユーザーに届かなければ意味がない。そこでKAENが間に入って代理店とつなぐことで、起業家の心に宿る「火」をより大きな「炎」にしていきたいと考えました。



↑ 社名の「KAEN」は、起業家の心に宿る「火」をより大きな「炎」にしていきたいという想いからつけられている

 

——お話を伺っていると、川田さんは「心に火を付け炎にする」という言葉を大切にされているように感じます。大切に感じるようになったきっかけはなんだったのでしょうか。

実は僕、小さい頃に「心に火が付いた」と感じる経験をしたことがなかったんですよ。

やりたいことをやるよりも、周囲から期待されることをしっかりこなす方が大切だと思っていたので。だから、親や先生から期待されたとおり「偏差値の高い大学に行って、大企業で働くこと」が人生の全てだと思っていたくらいなんです(笑)。

——起業されている今の川田さんとは全く違う考え方を持っていたんですね。

ええ。だから、中学時代は必死で勉強して、地元の進学校に進学しました。でも、見栄をはって周囲からの期待に応えようとしても、結局それは自分のやりたいことではないんですよね。念願の高校に入学するも頑張り続けられず、現役での受験は自分の実力に見合わない大学ばかり受験をして撃沈。結果として2年も浪人することになってしまいました。

その後、なんとか大学には入れたものの、希望していた大学ではなかったので、気持ちを切り替えられなくて。「僕の人生はもう終わった」と、家でニコニコ動画や2ch(現5ch)を見続ける日々でした(笑)。自分の描く理想と現実のギャップを前にして、終いにはストレスで円形脱毛症にもなってしまったんです。

——そんな大変な時期があったんですね……。

その後、なんとか気持ちを切り替えて「次こそは!」と思って目指したのも、大企業への就職だったんです。このように、大学時代は周囲の分かりやすい期待に応えることが「成功」と思い込み、それを追い求めなければという呪いにとらわれていましたね。

——その呪いがとけて、今のように自分のやりたいことを大切にできるようになったきっかけはなんだったのでしょうか。

大学3年生の時に始めたスタートアップでのインターンがきっかけでした。就職の際に有利になるだろうという下心から始めたインターンでしたが、その会社の社長や周囲のベンチャー経営者がとにかく衝撃的で。インターン先が、有名なVCのコワーキングスペースで、のちに今をときめく上場企業になるような複数のスタートアップと一緒に入居していました。

そのコワーキングスペースにいる起業家たちは、僕が目指していたいわゆる偏差値の高い大学出身なのに、大企業ではなく起業という選択をしていたんですよね。しかも、心の底からやりたい仕事をして、毎日楽しそうにしている。ただ漠然と毎日を送る自分にはないものを持っていて、すごく憧れたんです。

——心の底からやりたいことを仕事にしているベンチャーが、川田さんに新しい生き方を教えてくれた、と。

そうなんです。今まで”正解”だと思っていた道から外れてみたらどうなるんだろう――。社長の姿を見てそんな好奇心が芽生え、新卒でスタートアップではありませんが上場を目指す規模のベンチャー企業に就職することに。そこから先は、いくつかのスタートアップを渡り歩きました。

その後、さらに考えを変えてくれる出来事がありました。それが、1日単位でアルバイトを探せるデイワークアプリ「ワクラク」を提供する、Wakrak株式会社の社長である谷口怜央さんとの出会いでした。

彼は世界を変えたいという気持ちから高校を中退して上京。前職で私が彼をインターンとして採用して一緒に働いた後に、16歳で起業した経歴の持ち主でした。学校に行って勉強するのが”普通”なのに、やりたいことに全力投球している。その姿に感銘を受けたんです。

彼のそばで働くうちに「僕も誰かに認めてもらうため道の上を歩くのではなく、自分のやりたいことに挑戦したい」という想いが徐々に強くなっていきました。そこで、2019年の12月にKAENを立ち上げたのです。

「ここから世の中を変えるんだ」入居者の情熱に惹かれ入居を決意

——川田さんは入居前にも、co-ba shibuyaに来てくれたことがありましたよね。

そうですね。KAENのCI(コーポレート・アイデンティティ)を作る際に、企業のマーケティング支援を行う株式会社unname宮脇啓輔さんと、フリーランスアートディレクターの河野涼さんに手伝ってもらったんです。宮脇さんが会員だったので、CIを議論するときにco-ba shibuyaの会議スペースを借りました。



——その時の白熱した議論が印象的でした。自分の想いを熱く語る川田さんを拝見して、こんな素敵な人が会員になってくれたらいいなぁと思っていたんですよね。その後入居してくださって、嬉しかったのを覚えています。

co-ba shibuyaを使わせてもらった時、スタートアップでインターンをしていたころに使用していたシェアオフィスに雰囲気が似ていて驚いたんです。そのシェアオフィスには立ち上げ間もないメルカリやBASEなども入居していて、情熱を持って自分の信じた道を突き進んでいる人たちばかりでした。co-ba shibuyaを初めて訪れた時、そのシェアオフィスと同じような雰囲気を感じて、入居してみたいと自然に思ったんです。

——他にもコワーキングスペースはあると思いますが、co-ba shibuyaならではの特徴を感じたことはありますか?

もともと大きな熱量を持った人が集まるだけでなく、交流するなかで影響を受けあって、さらに熱量が高まっていくところですかね。その交流の場を上手く作り出してくれているコミュニティマネージャーの方々には感謝しかありません。

——そう言ってもらえると嬉しいです!

実は入居した日に、前職でもお世話になっていて、アイカサという傘のシェアリングサービスを運営する株式会社Nature Innovation Group 丸川照司さんと再会したんです。会社を設立したことや今後やっていきたいことを話すと、「是非うちの会社も手伝ってほしいです」と言ってくれて。入居初日にまたご縁がつながったんですよね。

周囲の人が想いを理解してくれて、そこから次の仕事につながっていく。そんな人とのつながりが生まれるのもco-ba shibuyaの魅力だなと感じています。

健全で迅速な代理店とのマッチングを実現させ、起業家の心の「火」を「炎」にしたい

——最後に、今後KAENで挑戦したいことを教えてください。

今後は、スタートアップやベンチャーがより代理店とマッチングしやすい仕組みを作っていきたいと考えています。ベンチャーやスタートアップが代理店を探そうとした場合、今は各代理店・パートナーのホームページを一つひとつ検索しなくてはなりません。

さらに、彼らのホームページを見ても「どの程度の実績があるのか」「得意な販売商材は何なのか」といった情報が記載されていないケースも多いんですよね。つまり、何を基準に選べばいいのかが分かりづらいんです。

——その状況をどのように変えていこうと考えているのでしょうか。

まずは、どのような代理店・パートナーが存在しているかを一覧で見られるように、情報を集約したいと思っています。その際、ただリストアップするだけでなく、各代理店の成約率や強みとなる販売商材の領域等のデータも可視化していきたいです。

データが可視化されれば代理店を見つけやすくなるだけでなく、代理店側も常に評価されて信用情報が溜まります。信用情報が可視化される前提があることで、より良質なパートナーであろうとするモチベーションにもなるんじゃないかと思っているんですよね。

——確かに健全なパートナーシップが結びやすくなりやすそうですね。

はい。また、今はKAENが間に入って代理店とクライアントを一つずつつなげていますが、それでは応援できるクライアント数に限度があります。データを用いて自動的にマッチングできるようになれば、より多くのクライアントを応援できるようになるはず。

心に火を宿しているクライアントと代理店を、よりスピード感を持ってつなぎ、その心の火を炎のように大きくする手伝いをこれからもしていきたいですね。


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困っている挑戦者を見ると放っておけず、すぐに助けたくなってしまうという川田さん。co-ba shibuyaでも色々な人の相談に乗ってくれており、その姿勢から私たちもいつも刺激を受けています。川田さん自身の心に灯った火も炎になっていくよう、co-ba shibuyaも心の底から応援しています。


[Profile] 川田勇輝

株式会社KAEN 代表取締役

新卒で株式会社エスキュービズム入社。大手小売、飲食企業へEC、iPadなどコンサル営業やプロダクト開発を経験。
途中、光通信型営業会社を社内ベンチャーとして2年で数億規模の売上まで立ち上げ
日本美食株式会社にて創業メンバーとして、2年で2万店舗の開拓やシリーズB調達まで経験。
Wakrak株式会社では再度立ち上げ時に参画。資金調達、営業設計、代理店戦略などの事業構築・運営を行い、2年で10万ユーザー、4000店舗獲得するサービスへ成長させる。
2019年12月27日、株式会社KAENを創業。
https://note.com/yk1210/n/ncdb260697338

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