「クライアントの目指す未来を、デザインの力で実現したい」
今回話を伺ったのは、都内の老舗メーカーでWebディレクター兼デザイナーとして働く大石慎平さんです。
2018年からはパラレルワーカーとしてのキャリアも歩み始めた大石さん。フリーランスデザイナーとしてグラフィック・Webなどのデザイン制作から、企業のコンセプトメイクをサポートするブランディングまで個人で請け負い、平日の夜や土日祝日にco-ba shibuyaを利用してくれています。
今回は、大石さんがデザイナー、ディレクターとして目指す未来や、パラレルワーカーから見たco-ba shibuyaの魅力を語ってもらいました。
〜〜〜コミュニティマネージャーより〜〜〜
平日夜・土日利用できるナイト&ウィークエンドプラン会員の大石さん。明朗・誠実な性格で相手にまっすぐ向き合い寄り添う姿は、周りからも好評です。
他の会員さんやクライアントに彼を紹介すると必ず「本当に良い方を紹介してくれてありがとう!」と絶賛されるので、なんだかコミュニティマネージャーの私まで鼻高くなってしまう誇らしい会員さんです。
co-ba shibuyaの入居をきっかけに、パラレルワーカーとしての一歩を踏み出した大石さん。同じように企業で働きながら、複業を考え始めている方に届いてほしいです。
私がモノづくりの世界に進もうと思ったのは、代々続く家業がきっかけです。
私の実家は、静岡県の地方で数代にわたって続く小売酒屋を営んでおり、幼い頃から両親をはじめ親族全員が忙しく働く姿を間近で見てきました。
そんな中、幼い頃からずっと聞かされてきた言葉があります。
それは「商売には『売る商売』と『つくる商売』の2つがある。うちは代々『売る商売』を生業にしている」という言葉です。
当時、その話をしてくれた親族は家業の進む道に誇りを持ってそう伝えてくれたのだと思います。しかし、当時の私はそれを聞いて「売る商売がそんなに大変なら、僕は『つくる商売』をしたい」と感じました。
家族との時間を犠牲にしてでも一生懸命働く両親の姿を見て、幼いながら相手にされない寂しさや家業の過酷さを感じ、自然とそう考えるようになっていったのだと思います。
それから料理人を目指して勉強をしたり、映画を撮りたいと思って芸術系の大学に進学したりと「つくる」を軸にしながらもフラフラしていました。
大学4年生になり、さすがに就職先を考えなければいけなかった時、頭に浮かんだのが「グラフィックデザイナー」でした。大学時代から佐藤可士和さんや大貫卓也さんといった著名なクリエイティブディレクターの作品に感銘を受け、漠然とではありましたがデザインの魅力は感じていました。完全な憧れからですが、それからデザイナーになる!と決意して活動を始めました。
そこから大学在学中にグラフィックデザイナーを目指して就職活動を開始。ちょうどリーマンショックのタイミングと重なったため、内定取消などの波乱もありましたが、卒業してから数年後の2012年に念願のデザイン会社に入社することができました。
デザイン会社での勤務は充実したものでした。しかし、数年経ちデザイン業務にも慣れた頃には自分がやっている仕事に違和感を感じるようになりました。
その数年間はとにかく数をこなすためにスピードと効率を追う毎日でした。企業として売上を目指すことは重要課題です。しかし一方では、瞬間風速的に「消費するためのデザイン」をし続けているようで、自分のやり方に悩むようになりました。
また、納品後のデザインがクライアントにどのように届いているのか分からないことも違和感のひとつでした。そのような中、次第に自分はなんのためにつくっているのか「つくる意味」を考えるようになりました。
次第にデザイナーとしてこれから「クライアントと一緒に継続的に共創できるような環境」で仕事をしたいと考えるようになりました。
その結果、現在の老舗メーカーにインハウスデザイナーとして転職しました。事業会社のデザイナーならば、一つの商品や企画に継続的に関われるだけでなく、関わったデザインが会社の中でどう使われているかを見届けられる。そう考えた上での転職でした。
現在は、国内外の自社サイトの運用管理とデザインを担当しています。入社して数年はカタログやポスターなどのグラフィックデザインを担当していましたが、会社として業務効率化やブランド訴求のためWeb活用を推進していくことになり、Webデザインの経験があった私が担当者として選ばれました。
初めに携わった案件は、ブランドのBtoCサイトリニューアル案件でした。Webカタログも兼ねているためデータベース構築も一緒に行い、1年以上をかけて数千万円規模の案件となりました。これほどのサイトリニューアルは初めてのことで本格的にWebカタログ化を推進していくにあたり、「紙カタログの方が使いやすい」「Webは開発や運用に時間とコストがかかるのに、それに見合った効果はあるのか」といった声を聞くことも少なくありません。
今後さらにデジタル化が進む中で、製品とブランドを効果的に訴求できる自社サイトは必要不可欠のはず。しかし、それを納得してもらうためには「自社サイトが会社においてどのような価値をもつのか」「その価値を発揮するためにはどんなデザインが適切か」を考えて、社内に丁寧に説明する必要性を感じました。
「製品を魅力的に見せるデザイン」ではなくて、「経営視点に基づいた、会社の未来に貢献するデザイン」ができるようになりたい――。
ビジュアルデザインからWebサイトの運用管理に携わるようになり、より経営にコミットするアプトプットの在り方を考えるようになりました。
2018年からは、グラフィック・Webのデザイン制作を主にブランディングのサポートも行うフリーランス活動をスタートしました。
複業を始めたのは、クライアントの企業活動に直結するデザインを行ってみたいと考えたからです。また、本業ではできないジャンルのデザインに挑戦することで、クライアントが描く未来を実現するためのスキルを磨けるのではないかとの期待もありました。
しかし、始めたのはいいもの、いきなり仕事をいただけるような人間関係や信頼があるわけもなく、ましてや意欲的に作業できる場所もありませんでした。
そこで出会ったのが多様な人材が集まるシェアドワークプレイスのco-ba shibuyaでした。
co-ba shibuyaには、フリーランスや起業家が集まっているだけでなく、様々な交流会やセミナーも開かれています。そこでの出会いから仕事につながる機会が増えただけでなく、入居者の方々から刺激をもらえてモチベーションもアップし、スキル向上も図れる。まさに私が探していた場所でした、co-ba shibuyaでの出会いを通じて、徐々にパラレルキャリアは充実したものになっていきました。
現在は平日朝と夜、土日祝日に利用できる「ナイト&ウィークエンドプラン会員」として、co-ba shibuyaを活用しています。
先日、co-ba shibuyaで出会ったデジタルプロデューサーの金本将幸さんの紹介で、武蔵小山にある喫茶食堂”kenohi“のコンセプトメイクや、Webサイトデザインを担当させていただきました。金本さんとは入居した当時から互いの仕事観に共感し合っていて、システム開発やWeb制作を行う金本さんの会社(株式会社フレバス)で様々な仕事をご依頼いただけるようになりました。
▲金本さんとの打ち合わせ風景
そのプロジェクトでは、喫茶食堂”kenohi“のオーナーと共に「kenohiは一言でいうとどんな場所なのか」「kenohiが提供している価値とは一体何か」について考え、言語化し、コンセプトやサイトデザインに落とし込んでいきました。
その過程で、オーナーが「お客様と接しているうちに、オープン当初に自分が抱いていた『こういう場所にしたい』『こんな価値を提供したい』という想いから、少しずつ変化しているのを感じていた。自分自身の想いの変化を言葉にしてくれて、嬉しかった」と言っていただけました。それを聞いた時にやってよかったと心の底から思いました。(取り組みの詳細はこちら)
対話の中でクライアントが自分の大切にしたい想いに気づける。そして、事業への想いを後押しすること。それが自分のやりたいことだと、あらためて感じました。
co-ba shibuyaがつないでくれたご縁がきっかけで、様々な人の想いを感じながらカタチにする仕事ができているのとても嬉しく感じます。これからも単なる受発注の関係ではなく、クライアントとより近い関係性の中で想いをカタチにする手伝いをしていけたら嬉しいですね。
複業で多くの人と出会うなかで、新しい目標もできました。それは、部分的な制作を担う「デザイン力」だけでなく、全体的な企画の方向性を探り、実現までこぎつける「ディレクション力」も磨くことです。
現在は、Webや紙媒体のデザイン制作をメインで行なっていますが、クライアントと共により良い未来を描き実現するためにはそれだけの手段では不十分です。必要に応じて、リアルな場を企画・設計したり、様々な技術を持った人を巻き込んだりすることが、クライアントの想いをカタチにする最適な手段になることもあります。
そう考えたときに、自分ができるデザイン制作に固執するのは意味がありません。もっと課題に対して全体的な解決策を講じることができるディレクション力が必要だと感じるようになりました。
ディレクション力を身につけようと始めたことの一つが、一般社団日本ディレクション協会での活動です。2019年の春から、運営メンバーとして参加し、セミナーや交流会の企画、運営サポートを行い、時にはイベントで登壇もさせていただいています。
デザイン力と共にディレクション力を磨くことで、「クライアントの課題に柔軟に応え、より親密に、より継続的に応援できるデザイナー」になっていきたいです。
実は2020年からは家業のサポートも始める予定です。元々は酒販専門店でしたが、現在では株式会社として複数の事業を展開する会社になっています。ただ地方の零細企業なので経営は常に大変です。両親の体力もあるので、来年からは段階的ではありますが家業に入ろうと思っています。
本業もあるので限られた中ではありますが、既存事業を客観的な視点で観察して改善していくこと。そして、新たな事業を親族やスタッフのみんなで考えることを始めたいと思っています。
そう思えたのも、co-ba shibuyaで仕事を始めて様々な経営者やクリエイターの方に出会ったからです。デザイナーとして企業を応援するのであれば、もっと身近な家業を応援しようと、今になってやっと思った次第です。
様々な場所での経験を通してスキルを磨き、自分が目指すデザイナー・Webディレクター像にさらに近づいていけたらと思います。
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自分が目指すデザイナー・Webディレクター像を明確にもち、そこに至るための努力を惜しまない大石さん。
そんなストイックな姿勢と共に、関わる人の想いを尊重する優しさをあわせ持っているところが、大石さんが皆から愛される所以なのだと感じたインタビューでした。これから大石さんは社会にどんな価値を発揮していくのか、目が離せません。
また、現在co-ba shibuyaでは仲間を募集しております!
記事を読んで 大石さんに興味を持った方も、ぜひ問い合わせください。ご紹介いたします◎
※各画像クリックでフォームに飛びます。
取材協力:inquire Inc.(取材・執筆:辻野 結衣 、編集:岡本 実希 )
[Profile] 大石 慎平
WEBディレクター/デザイナー1987年 静岡県掛川市生まれ
名古屋学芸大学 メディア造形学部 卒業
卒業直前に内定取り消しに遭遇、一時夢破れたが2012年デザイン会社に入社。紙・WEBのグラフィックデザインに従事し、2016年に現メーカーに転職。自社のWEB業務全般を担うWEBディレクター兼デザイナーとして就業中。
2018年からはフリーランスデザイナーとしても活動。ブランディングを軸にしたコンセプトメイクとデザインを実践中。
また一般社団日本ディレクション協会の運営メンバーとしてセミナー企画や登壇なども行う。