DAY 31 飛騨高山での出会い vol.2

  • 2015/11/20

あっという間に高山滞在も最終日。今日も飛騨での出会いを書き留めておきます。

今回ご紹介するのは高山市街地から車で約20分ほど行った清見町というところにある工房での出会いです。

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▲見るからにこだわりを感じる看板です。

私は「飛騨の匠」という言葉を知らなかったのですが、古来から優れた建築・木工技術を持っていた飛騨地方の職人たちのことをそう呼ぶのだそうです。高山周辺は古くから林業が発達した地域で、現在でも多くの家具メーカーや木工の工房などがあります。

今回お会いした塩谷英雄さんは、そんな飛騨の匠の技術と文化を次の世代へと受け継いでいくために、飛騨新伝統工芸「nokutare」(ノクターレ)というブランドで木を使ったユニークな製品をつくっておられます。

工房の中に入るなり、私が好きな雰囲気が充満しています。思わず塩谷さんに「私、木が大好物なんです!」と伝えて、魅力的なプロダクトの数々を見せていただきました。

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▲所狭しとプロダクトが並びます。

まず見せていただいたのはスマートフォンを置くとスピーカーになる「携帯忘れな盆」。右側の空洞部分にスマートフォンを置くと内部で反響して音が大きくなる、電源いらずで使えるアイテムです。

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▲iPhoneを置くと電源いらずのスピーカーに。

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▲蓋を開けると中身はこんな感じ。

内部の形状は試行錯誤を繰り返して出来上がったのだとか。80以上の試作をつくって悩んだ末にだどり着いた形状は、音響機器メーカーの方に「どうやって計算したんですか?」と尋ねられるほどだったそうです。ちなみにiPad版もあります。

携帯を立てかけるスタンド部分は取り換えも可能で、様々なデザインがあります。人型のものは伝統工芸「一位一刀彫」の技術を使ったものだそうです。

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▲スタンドのスマホを支える部分は取り換え可能。

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▲スタンド部分の取り換えアイテムはこんなにたくさん。

ちなみに、付属の説明書は“捨てられない説明書”をコンセプトに飛騨地方で古くから続く「山中和紙」という手漉き和紙を使った巻物になっています。内部の右側の細長いくぼみにすっぽり収まって、思わず取っておきたくなる説明書。これは住さんのアイデアなんだそうです。

続いて見せていただいたのは木でできたネクタイ、その名も「NOKUTIE(ノクタイ)」。ネーミングは飛騨地方の方言「のくたい」(温かいという意味)からきているそうです。せっかくなので住さんと一緒に試着。思っていたよりも軽量でした。クラウドファンディングでの資金援助を得て改良中とのことでした。身近で身につけている人を見る日も近いかもしれません。

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▲デザインもいろいろ。左端は飛騨の伝統工芸「飛騨春慶」を施したもの。

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▲似合ってますか?

「世の中の半歩先を行きたい」という塩谷さん。

つくったものを使った人が「これ何?」と思って使ってみたらとってもよくて、その製品を通してその人のライフスタイルがちょっと変わる。

考えてみると、私は世の中にあるたくさんのモノを指定された使い方で使って生活しています。いわばモノに合わせて生きている。もし自分が「こんな生き方がしたい!」というのに合わせて身近な職人さんが付加価値をつけて何かをつくってくれたら。もっと楽しい未来が待っているような気がします。

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▲塩谷さんと。

飛騨高山でのすばらしい出会いの数々に感謝しつつ、次は東北へ向かいます。

Profile  光井周平

1983年広島生まれ。幼少期から城好きだったことが要因で中学校卒業後に呉工業高等専門学校(呉高専)建築学科に入学。 卒業後は広島大学に編入学をして、大学院工学研究科博士課程前期、後期を経て母校である呉高専に教員となる。 専門分野は建築構造で、助教として主に木造建築に関する研究をしている。 学生とともに呉市両城の空き家再生プロジェクトに取り組み始めて以来、“場(空間)”と“そこに集う人々”が地域の活性化に どのような役割を果たすのかに関心がある。2015年10月から12月まで民間企業研修のためツクルバで活動中。