10秒で野菜を摂取できるNICE n EASYが生まれるまで。周囲を巻き込み、仲間を増やすプロダクト開発を実践 |株式会社テックブック 清水拓也

  • 2018/03/19

「もうちょっとだけ寝ていたい」ーーそうして睡眠を優先して、朝食を摂るチャンスを逃してしまう、なんて方は多いのではないでしょうか。
「バランスの良い食事をしたほうが健康になる」とわかっているものの、なかなか毎日準備するのは手間がかかり、面倒ですよね。

そんなときに心強い味方となってくれるのが、10秒で野菜を摂取できるパウダー「NICE n EASY(ナイスンイージー)」です。
NICE n EASYは、20〜30代に足りていないとされている野菜と果物100g分を約10gのパウダーに凝縮。「ターボドライシステム」と呼ぶ独自の方法でパウダー化しているため、野菜・果物本来の色、風味、栄養素、ビタミン、カロテン、ポリフェノール等の機能性成分を壊さず高濃度に含有できるのが類似商品との違いです。
NICE n EASYの商品は「ENJI」と「MOEGI」の2種類。ENJIは「トマト」「ビーツ」「にんじん」「バオバブフルーツ」を使用しており、MOEGIでは「ほうれん草」「かぼちゃ」「バナナ」が使用されています。
それぞれの粉を水に溶かして飲んだり、シリアルにかけたり、ヨーグルトに混ぜたりすることで、美味しく野菜を摂取でき、野菜不足を解消することが可能になっています。法人プログラムも提供されており、co-ba shibuyaでもトライアル導入を行っています。

今回は、注目の商品であるNICE n EASYを提供している株式会社テックブック代表取締役の清水拓也さんに話を伺いました。

「食」をテーマに起業。自分に紐づく課題にアプローチ

NICE n EASYを開発される前はどんなお仕事をされていたんですか?

清水さん(以下清水):新卒でカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に入社しました。元々、自分の手で新しいものを生み出したいという想いがあって、CCCを退社。そこからベンチャー企業を1社経て、株式会社テックブックを創業しました。

創業後はすぐに商品開発を?

清水:いえ、デジタルマーケティングに関するクライアントワークをこなしつつ、自分に課題に紐づくものという視点でいくつか事業のアイデアを探していました。アプローチを繰り返す中で見つけたのが、「食」の領域だったんです。

食について、どのような課題を感じていたのでしょうか。

清水:朝食を簡単に済ましていることに課題を感じていたんですよね。自分が30代に近づいていたのもあり、朝の時間にできるだけ身体に良いがしたい、という思いがありました。その悩みを母親に伝えたら、ミキサーをプレゼントしてくれたんですよ。しばらく野菜や果物を買ってスムージーを作っていたのですが、なかなか継続できなくて。

スムージーって、毎日作るのは面倒って声もよく耳にします。

清水:そうなんですよ。もっと手軽に野菜を摂取できる方法はないかと考えました。最初は、小さな容器に急速冷凍した野菜を入れ、それを豆乳とミキサーで混ぜるプロダクトを考えていました。

アイデアだけ聞くと良さそうですが、実現は難しかったんでしょうか?

清水:ユーザーになりそうな方にヒアリングをしたところ「それでも面倒」「ミキサー洗うのが嫌」という声が多かったんです。
もっと簡単にできる方法はないかと考えたときに、プロテインのようにパウダーを水で溶かす形にしたら良いのではないかと発想して、NICE n EASYが生まれました。


▲ ENJI(左)とMOEGI(右)。着色料や甘味料、香料、保存料などは使っておらず、野菜と果物本来の味を楽しめるといいます。


清水さんは、食に関する専門知識があったわけではないですよね。知識がない中でのプロダクト開発において苦労されたことはありますか?

清水:良い素材を使ったとしても、野菜をただ粉末にした状態では美味しくないんです。粉にした野菜を、どう混ぜ合わせるかが課題でした。その知見は自分にはなかったので、食関連の仕事をしている方や管理栄養士の方にアドバイスをもらうようにしました。

原料はどうやって探したのですか? もともと、お知り合いだったのでしょうか。

清水:最初はひたすら電話でアプローチをして、相手に興味を持ってもらえるようNICE n EASYの企画を伝えていきました。断られることも多かったのですが、原料である野菜の粉を製造している九州ベジパウダーさんは企画を説明したら、その日に「やりましょう」と言ってくれました。

原料の会社は、どこに興味をもってくれたと考えていますか?

清水:「企画とマーケティングが得意」と伝えたのが大きいと思います。原料自体は既に販売されていたのですが、粉をそのまま売っても、消費者の方に価値を理解してもらうのは難しく、ビジネスは広がりません。だから原料をどのように活用するか、どういうパッケージにするかという企画・マーケティング部分で貢献できることを伝えましたね。 

co-baでイベント開催やユーザーヒアリングを実施。会員の協力を得ながらプロダクト開発を進める

清水さんは、どういった経緯でco-ba shibuyaに入居をされたのでしょうか?

清水:もともとオフィスを構えていたのですが、ゼロから事業を作り直すタイミングで、固定費を抑えるためにもコワーキングスペースへの入居を検討していました。
いくつか見学してみて、多くのコワーキングスペースは入居者同士の関わりが少ない印象を受けたんです。その中でco-ba shibuyaは、ただ働く場を提供するのではなく、人と人がつながるコミュニティがそこにあるように感じました。それが決めた理由ですね。

実際に入居されてみて、いかがでしたか?

清水:(co-baの運営元である)ツクルバさんが「人と情報が交差する『場』をつくりたい」というコンセプトを掲げていますが、正にその通りで。ここにいることで、新しい人と出会ったり、新しい情報に触れたりできることがメリットだと感じています。
プロダクトを開発する上でも、会員の方にヒアリングさせてもらったり、co-ba shibuyaの空間を借りてNICE n EASYを活用したレシピを作るイベントも開催しました。


▲ co-ba shibuyaで開催したイベント「NICE n EASY研究所」の様子


co-ba shibuyaが主催するto Cベンチャープレゼンイベント「sprout」に登壇いただいたときの手応えはいかがでした?

清水:プロダクト開発に集中していると、ついついプロダクトのアップデートを言語化して人に伝えるのを疎かにしがちになるんです。sproutに登壇し、大勢の前でNICE n EASYのことをプレゼンさせてもらえたのは、いい機会になりました。co-ba shibuyaを運営している方々が温かい空気を作ってくれて、質問もしてくれたのでありがたかったですね。

開発を進める中で、クラウドファンディングも実施されていました。クラウドファンディングの狙いはどういったものだったのでしょうか。

清水:実は、資金調達はクラウドファンディングの主な目的ではありませんでした。より多くの人にNICE n EASYのことを知ってもらうために、クラウドファンディングを通じてプロモーションを行ったんです。

クラウドファンディングをやってみて、狙い通りの結果は得られましたか?

清水:目標金額に対して523%となる支援が集まり、プロモーション効果も得られましたが、その他の価値もありました。支援してくださった方の想いや期待の声、クラウドファンディングを実施したからこそ生まれたつながりもありました。

開発者の顔が見える、参加型のプロダクト開発を

2018年2月からはオンラインでの販売も始まりました。手応えはありますか?

清水:おかげさまで、初回ロットも好調です。最初は「自分が欲しい」と思って作り始めたプロダクトでした。走りはじめて、対面やSNSなどでユーザーの声を聞いていくうちに、多くの人が求めているプロダクトなんだという実感が生まれてきました。まだ多くの人の手に届くプロダクトにはなっていないので、大事なのはこれからですね。

法人向けプランの提供も開始されていますよね。今後も法人向けの動きはされていくのでしょうか?

清水:はい。直近では、co-baの運営元であるツクルバさんと提携が進んでいます。ツクルバさんやco-ba shibuyaにトライアルで導入いただいたり、ツクルバさんの紹介でNICE n EASYを病院内の商品として設置させていただいたりしています。

ユーザーテストをしたり、イベントを開催したり、クラウドファンディングを実施したりと、プロダクト開発に多くの人を巻き込み、仲間を増やしているように感じました。

清水:ありがとうございます。どこの誰が作ったか分からない製品だと、なかなか欲しいとは思ってくれないじゃないですか。だから、作った人の顔が見えるようにするのは意識しています。Webサイトに顔を出していますし、もっとイベントも開催していきたいです。
あとは、もともと食に関する知識や経験がない素人で、なおかつ1人で開発しているので、お客さんと一緒に開発していきたいと思っています。お客さんも巻き込んで、自分たちの課題を解決するための仲間を増やしていきたい、そんな想いがあるんです。


▲ 2サイズ展開で、360gと12gの2種類がある。

今後の展開についてはどのように考えていますか?

清水:ユーザーのハートをつかめる製品に仕上がったとは、今の段階では言えないと考えています。引き続きユーザーの声を聞きながらプロダクトの改善を進めていきたいです。
あとはプロダクトの提供者とユーザーという関係性ではなく、ブランドを一緒に作る仲間として、多くの人に関わってもらいたいという視点は今後も大切にしていきたいですね。

 

清水さんはNICE n EASYの開発を進める上で、co-baで生まれた「人のつながり」を最大限に活用しながら、イベント開催やユーザーヒアリングを行ってきました。一人で製品を完成させるのではなく、開発プロセスを多くの人と共有し、さまざまな人を巻き込みながら製品のリリースまでたどり着きました。世界に羽ばたいていくNICE n EASYを、co-ba として引き続き応援したいです。


[Profile] 清水拓也

株式会社テックブック

株式会社テックブック
清水拓也(しみずたくや)
1987年生まれ、東京都出身。立教大学卒業後、新卒でカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社に入社。店舗開発や運営に携わったのち、ベンチャー企業でWEBマーケティングの経験を経て、2015年に株式会社テックブックを創業した。
HP:https://techbook.jp/
NICE n EASY:https://niceneasy.jp/