コラボレーションで世界をポジティブに |Happiness Architect 藤本太一

  • 2014/06/18

「ホームレス社長」を終え、日本に帰ってきた藤本太一さん。
  活動のキッカケや、帰国後の変化、これからの動きについてお話を伺いました。

きっかけをつくるための仲間を集める活動を

──太一さんは「Happiness Architect」として様々なプロジェクトをプロデュースされていましたが、会社立ち上げの経緯について教えてください。

元々は、プロの都市デザイナーになりたくて、大学は都市計画、大学院では都市デザインを専門でやっていました。でも、いざ街というハードをデザインして、「この街なら幸せになりますよ!」って言ったとしても、結局それって街の人次第だな、と思って。それに気づいてから、街というハードを作ることに興味がなくなって、「すでにあるものでどう楽しむか」を考えるようになったんです

たとえばロンドンっていう街そのものを変えなくても、ロンドンに住む人たちが一人でも多く、自分でわくわくすることを探して、それに没頭することができれば、その街って勝手にポジティブになるんじゃないか、って……。

そこで、会社(当時TWOPLANTON LTD.)を立ち上げて、思いやパッションをカタチにするための、いわゆる0→1をつくるクラウドファンディングサービスを作ろうと決意しました。やりたいことがあるのにきっかけが掴めない理由として、「お金がないからできない」という人が多いように感じたので。でも結果は、大ゴケで……。

なんで上手くいかなかったかというと、きっかけを作るのはお金じゃなくて、やっぱり人なんだよね。ロンドンの起業家50人くらいに、「どうして”とりあえず”始めたのか?」という問いかけをしたら、「仲間がいたから」とか、「家族が・彼女の後押しがあったから」とか、人に関する理由がほとんど100%だった。確かに自分も何かを始めるとき、友達と一緒にやろうよ!って言って巻き込むことで、言い逃れできなくなる。人ってすごいキッカケになるんだな、と再認識しました。

だから、「人を集める」こと、キッカケをつくるために同じような仲間を集めるということを軸として、ロンドンでHappiness Architectに改名して、スタートしました。

ロンドンでの“ホームレス社長”生活

──大学院時代にイギリスに留学され、ロンドンで会社を立ち上げた太一さんですが、そこで活動するようになったのには何か理由があったんでしょうか?

元々、日本の企業文化が嫌だったから外国に行こうと思っていたんだけど、中でもイギリスは、新しい文化をつくるのがすごく上手な国だなと思っていて。産業革命もイギリスだし、資本主義をつくったのもイギリスだし、ソーシャルビジネスっていう文脈もイギリスが発祥だし、芸術も先頭を行ってるし。イノベーションを大事にするっていうか、枠から外れてもOK、ちゃんと筋が通っていれば認めてあげるよ!っていう風潮がある気がする。

実際に始めてみてから感じるのは、ロンドンに暮らしていると世界の人が勝手に来てくれる。毎日全然違う人がどんどん来てくれたり、世界的に有名な人が講演しにきてくれたり。日本にいると日本人しか集まらないし、色んな人に会うなら自分で行くしかないんだけど、ロンドンは違う。それもロンドンでやる理由の一つだね。

───中でも「ホームレス社長」は、ロンドンで家を持たずに「150日間で500人のチェンジメーカーと友達になる」というユニークな企画でしたね。企画を終えて日本に帰国した後の、太一さんの気持ちの変化について教えてください。

参考:「ホームレス社長」記事URL http://greenz.jp/2013/11/22/homelessceo_final/ (greenz)

ホームレス社長を始める前は、周りの自分に対する認識は「異国の地で起業した日本人がいるよね」って程度で、何をやっているかはあんまり関係無く、その勇気だけを買われている、という感じでした。でも、ホームレス社長の企画をgreenzで連載したり、メディアに取り上げていただいたりしたことで、少なからず人のつながりやコラボレーションにフォーカスを当てた人間なんだ、ということは分かってもらえるようになったかなと。「イギリスで色々やってる日本人」から、「イギリスで色々やってる”自分”」に変われた気がする。自分の考え、やりたいことが上手く周りに伝わってるかは分からないけど、その変化はだいぶ感じたかな。

あと、「ホームレス社長」の企画を通じて、「人はつながりの中で生きれる」っていうことは証明できたと思いますね。

寝る場所がないなら、家を持ってる人と友達になればいい。ご飯を食べたいなら、作ってくれる人を見つけたらいい。まあいわゆる、完全なヒモだね(笑)。でも、たとえ家を持たずに0の状態になっても、助けてくれる友達や人がいれば、人の繋がりで生活をつくることができる。もちろん、一方的に助けてもらうだけなのは辛いし、どこかで還元しないといけない。でもそのサイクルが出来れば、生活は担保できるなって。 

個人的には、イノベーションとかってそういう風に生まれるんじゃないかな、と思います。例えば英語の学校に行くんだったら、一週間くらい街をプラプラして、英語のできる友達を捕まえた方が面白いよね?それに、もしかしたら英語以外のスキルも貰えるかもしれないし、自分も何か、その人ができないことをすればいい。イノベーションを生むとか、世界を良くするための新しいものは、そういうコラボレーションで作れると思っています。

東京ではないようなコラボレーションを

──これからの太一さんの活動について教えて下さい。

今度は舞台を東京に変えて、自分が外で見てきたもの──アイディアとか、人とか、そういうのをうまく混ぜ合わせることで、東京ではないようなコラボレーションを仕掛けていきたいです

まさにその企画として進めているのは、「 Morning Gloryville Tokyo 」という早朝フェス。このアイデア自体はもともとイギリス生まれのものなんですが、それを東京の人向けにやろうと。2014年7月に初回をスタートして、毎月、平日の朝6時半オープン、10時半に終了。DJイベント、マッサージやヨガなんかも考えています。仕事に行く前のサラリーマン、仕事が忙しくてなかなかクリエイティブなものに触れられていない人に来てほしいなと思っています。


「Morning Gloryville Tokyo」イベントページ:
http://morninggloryville-tokyo.peatix.com/view

これをやろうと思ったキッカケは、日本に帰ってきたときに久しぶりに乗った満員電車。満員電車の日本人って、なんか意地悪だよね(笑)。毎日利用して会社に行くと、仕事をするモチベーションも下がってしまう。だから、満員電車の空気をフェス帰り特有の一体感のある空気に変えたいと思っています。例えばサマソニの帰りの電車は、みんな共通体験があって高揚してるから、同じ満員電車でも上を向いて笑顔になってるよね。

踊り終えて仕事に行く電車の中で、スーツの袖下にモーニング・グローリーのリストバンドつけてたら、「おっお前も?」みたいな……。そういう一体感をつくりたい。これをを仕掛けることで、日本の朝をポジティブにしたい、と思っています。

──なるほど、想像しただけで、ワクワクします!  他に、伝えたいことはありますか?

co-baへの愛を伝えておこうかな(笑)。日本に帰ってきて一番初めに来たのが、co-baなんです。ここを軸にいろんなプロジェクトを展開しているし、面白い人たちといいコミュニティを築けている気がします。ここで出来た横のつながりが、一つ一つプロジェクトとして形になっていくのが、すごく面白いです。もっといろんなことに挑戦していきたいですね。

──ありがとうございました! これからも、太一さんの活躍を楽しみにしています。

(取材/テキスト:内田達也 校正/野田侑里、芝田まな)


[Profile] 藤本太一

Happiness Architect

1986年3月20日生まれ。起業家。イギリスの大学院に留学後、2011年ロンドンを拠点に「Happiness Architect」を立ち上げる。しかし、1年前に資金がなくなり、家を出るはめに。逆転の発想でコラボレーションの意味を知るべく、家を持たずに150日間で500人のチェンジメーカーと友だちになる「ホームレス社長」という企画を行った。 その他、「はったり」を「ほんもの」へ ビジョンをカタチにするためのセルフ・ブランディングの学校 「はったりすくーる」の運営や、世界50都市以上に広がる社会起業家のコミュニティ Make Sense Tokyoの運営、「あなたの会社のパーティーオーガナイズさせて下さい」パーティー社長の企画等、様々な仕掛けづくりに取り組んでいる。そして、現在日本に帰国後フリーランスへ。世界中のチェンジメーカーとのコラボレーションを武器に、様々な企画のプロデュースをしている。