「怖かったんです。情熱に溢れていたあの頃の自分を、忘れていくようで」
田中駆さんは、NPOの理事、会社員、フリーランスのカメラマンと、さまざまな立場から人生を見つめてきた人物です。
彼が立ち上げたのは、「共感」という想いをベースに、プロジェクトの仲間集めができるプラットフォーム「tomoshibi(トモシビ)」。何かを始めたい人が、プロジェクトの概要が分かるページを作成し、そのページを見て共感したユーザーが、プロジェクトの人材募集に応募できるサービスです。「人材版のクラウドファンディング」といえます。
なぜ田中さんは起業をしようと思ったのか、co-ba shibuyaに入居した理由も併せて、tomoshibiのこれまでと今後の展望を伺いました。
サービスを立ち上げたきっかけは?
田中さん(以下、田中):大学1年生のときに国際協力に関連したNPOに所属したのですが、スキルのある人がなかなか集まらず、チームビルディングがうまくいっていないと感じたんです。他のNPO団体も人手不足で悩んでいて、解決できるようなサービスがあれば良いのになと。
ただ、一度は就職されるという道をとっていますね。
田中:当時は構想がなかったんです。所属していたNPOで理事を務めていて、事業型にするか就職するかの二択で迷っていました。就職を選んだ理由は、「新卒」というゴールデンチケットを利用すべきだと思ったから。ただ、自分自身で何かを成し遂げたい気持ちも強かったので、入社3年以内に一人で戦えるスキルを身に付けると決心していました。
思うようにいったんでしょうか?
田中:それが……。会社員として忙しく働くなかで、入社当初の熱意を忘れかけている自分に気づきました。実力不足ゆえに残業時間が増えてしまい、精神的にも辛かった。
それも自分の限界を知るという意味では必要な経験だと思うんです。でも、そのままではいけない。かつての「3年以内に独立するというやる気」を取り戻すために、同じように悩む同期と集まって、新しいことに挑戦できないかを考える機会を設けました。
結果的に国際協力に関連した一般社団法人を立ちあげたのですが、その経験を通して、もう一度前に進むことができたんです。苦しい状況を打破したり、新しいことを始めたいと思ったときに大切になるのは、思いに共感して集まった仲間なのだと気付いた瞬間でした。
▲ 同期らと立ち上げた一般社団法人のメンバー
そこで、tomoshibiのアイデアを思い付いたのですか?
田中:いえ。tomoshibiの立ちあげにつながったのは、もう一つのきっかけがありました。友人が新しいプロジェクトをクラウドファンディングで始めるときに、「お金」という形で支援をするのではなく、「写真を撮る」という形で協力したことがあったんです。
そのときに、支援の手段が「お金」だけしかないのは、もったいないなと思って。共感したプロジェクトに、自分の持てる「スキル」で貢献する形もあって良いのではないかなと。そんなことを考えているうちに、tomoshibiのアイデアを思いつきました。
NPO、会社員、フリーカメラマン。すべての経験が起業につながったんですね。
(2018年)8月にβ版をリリースされました。ユーザーから反響はありましたか?
田中:想定していた以上の反響をいただいており、サービスの改善にもつながっています。たとえば、当初は「エンジニア」や「デザイナー」など募集する職種をプロジェクトのオーナーが指定していたのですが、「もっと気軽にオーナーと話したい!」という声をもらったので、「話を聞きたい」ボタンを実装しました。これにより、役にたてるか分からないけれど、共感しているから何か貢献したいという方も応募できるようになっています。
類似サービスもあるように感じますが、それとの差別化はどのように考えていますか?
田中:「給料」ではなく、あくまでも「共感」で人が動くプラットフォームであることを重要視しています。もちろん給料は大切な条件なのですが、スタートアップやNPOの仲間集めは、お金以上に「一緒にやりたい!」と思ってもらえるかが大事だと思うので。
ビジネスモデルはどのような形で検討されているのか教えてください。
田中:プレミアムプランの導入を考えています。
プロジェクトのオーナーが必要としているスキルを検索すると、条件に合うユーザーの発見やスカウトできるなどの追加機能が利用できることを想定しています。また、NPOや設立1年以内のスタートアップの登録料は無料としていますが、2年目以降は有料の法人向けの料金プランも考えています。
▲ 9月5日にリニューアルされるTOMOSHIBIのWebサイト。
起業時に、co-ba shibuyaに入居されましたよね。何かきっかけはあったのでしょうか?
田中:起業することをFacebookで投稿したときに、co-ba shibuya会員の株式会社Same Sky 二方さんが連絡をくれたんです(※1)。自分と同じように切磋琢磨する起業家や、仲間集めもできるようなコミュニティを探していると相談したら、ここを紹介してくれました。
co-ba shibuyaの第一印象はどうでしたか?
田中:会員の方々が頑張っている様子を肌で感じられる空間だと思いました。内部のイベントで、会員同士も交流できる。それぞれが個人の事業に打ち込みつつ、一緒に面白いことをしようと簡単に手を取り合うこともある。co-ba shibuyaの空間自体がtomoshibiで実現したいことに似ていると思い、すぐに入居を決めましたね。
実際に入居してからco-ba shibuyaについてはどのように感じていますか?
田中:「コワーキングスペースの運営会社」と「一人のユーザー」という関係性以上に深いつながりを築けるのは、co-ba shibuyaならではの魅力だと思っています。
たとえば、コミュニティマネージャーの方から「一緒に面白いことをやりたいね」と声をかけてもらったりとか。さっそく9月5日には、起業前・起業直後のアイデア段階であるスタートアップを応援するイベント「Stoke Point〜資金・仲間・場所が揃うスタートアップ応援イベント〜」を開催することになりました。
地方創生、ものづくり、WEBサービスまで、業界業種を問わず、これからに挑戦する起業家の「想いの着火点」となるべく、「資金」「仲間」「場所」の「スタートアップ三大要素」をスピーディかつ効果的に集めるノウハウを共有する場所になる予定です。
tomoshibiの今後の展開としてはどのようにを考えていますか?
田中:「仲間集め」以外の機能を様々なプレイヤーと連携することによってプラスしたいと考えています。新しくプロジェクトを始めるときは、先ほども話した「資金」「仲間」「場所」の三位一体がないと始まりません。
資金面は、tomoshibiの中で独自にクラウドファンディングの機能を入れることも当初は考えていたのですが、自社だけでなく周りを巻き込みながら事業展開することが、サービスを成長させるうえで必要と思い、CAMPFIREさんとイベントから連携することになりました。「tomoshibi(仲間)」「CAMPFIRE(資金)」「co-ba shibuya(場所)」が連携することで、新規事業を始めるために必要な要素を一貫して提供できる仕組みを作れたらなと。
9月5日のイベント「Stoke Point〜資金・仲間・場所が揃うスタートアップ応援イベント〜」は、まさにその先駆けというわけですね。
田中:そうです。「何かやってみたい!」というアイデアを持っている方に足を運んでもらい、その強い思いに着火させる武器をお渡しできればと思っています。
最後に、tomoshibiを通して田中さん自身が実現したい未来を教えてください。
田中:誰もが、自分の「好き」「やりたい」に挑戦できる世界を作りたいです。理想は、ゆるっと集まり、ガッと取り組んで、ふわっと解散すること。それくらい自由な働き方が、企業や個人という枠に捉われずに生まれるといいなと。そのなかで、企業と個人が対等な関係で結ばれたり、個人同士がやりたいことでつながることができたら最高ですね。
自由な働き方が普及してほしいという思いは、これまでの経験によるものですか?
田中:はい。会社員をしながら、フォトグラファーと社団法人の立ち上げもして。大変なこともありましたが、学んだことが相互に生かされることも多かったんです。そして、何より楽しかった。そういう生き方を誰もが実現できる社会になってほしいと思っています。
co-ba shibuyaの空間自体が、「tomoshibi」に似ている。インタビュー中にそう語ってくれた田中さん。単なる“場所”としてではなく、誰かの「やりたい」を後押しするためのプラットフォームを共創する仲間として、私たちを選んでくれました。
新しいことを始めたいと思っている方は、ぜひ9月5日に開催する「Stoke Point〜資金・仲間・場所が揃うスタートアップ応援イベント〜」に参加してみてくださいね。
※1 株式会社Same Skyについてはこちらをチェック!
▶︎ 過去の会員インタビュー:LINK
▶︎ CAFE PASS:LINK
[Profile] 田中 駆
株式会社TOMOSHIBI代表取締役CEO。
1992年、神奈川県横浜市生まれ。横浜市立大学 起業戦略コース卒。
新卒で大手人材系企業に就職、営業・経営企画・新規事業企画・DX推進等を歴任後、大手クラウドソーシング企業に転職後、2018年に独立。
その他にも一般社団法人SokhaCambodia 理事、フリーランスフォトグラファー、フリーの新規事業パートナーとパラレルキャリアを実践中。
tomoshibi:https://tomo-shibi.jp/
ポートフォリオ:https://kakerutanaka0611.wixsite.com/kakegraph